民主主義を通してアメリカの強さを描く、密室劇の最高峰
- 8番陪審員
- 「この映画がいかに完成度の高い作品であるかを、ここで皆さんと一緒に討議したいのですが…」
- 7番陪審員
- 「今さらそんな話してたって時間のムダだろ!ヤンキース戦の試合に遅れちまうよ!」
- 10番陪審員
- 「そうだ!俺の工場は今火の車でそれどころじゃないんだ!」
- 2番陪審員
- 「私は構いませんよ」
- 6番陪審員
- 「もともとこの作品はテレビ映画として製作され、予算はわずか34万ドル、撮影日数は2週間だったらしい。俺がかつて住んでいたスラム街のダチがそう言っていた」
- 9番陪審員
- 「非常に建設的な提案じゃ。喜んでつきあいましょう」
- 3番陪審員
- 「ジジイはひっこんでろ!」
- 6番陪審員
- 「おい!老人はもっと敬え!今度そんな口をきいたらぶんなぐってやる!」
- 1番陪審員
- 「じゃあ挙手で決め…」
- 8番陪審員
- 「このように本作では非常にキャラの濃い、類型的な登場人物が12人登場します。密室劇であるがゆえに、そのキャラクタライズはより活かされます」
- 2番陪審員
- 「なるほど、非常に興味深いですね」
- 3番陪審員
- 「どこが興味深いんだ、このハゲ!」
- 12番陪審員
- 「ヘイ、みんなピリピリしてどーしたの?楽しくやっていこうよ!」
- 4番陪審員
- 「キャラが濃い、だから密室劇として面白い…というのは非常に短絡的な結論だな。少なくともそれは人物設定の巧みさであって、何一つドラマツルギーに関与するものではない」
- 3番陪審員
- 「その通り!」
- 8番陪審員
- 「そうかもしれませんね。ただ私が言いたいのは、基本的にこれはサスペンス映画ではなく、サスペンスという形式を借りて民主主義を説いた作品である、ということです。それを深堀りするためには、パーソナリティーの異なる登場人物を配置しなくてはいけなかった」
- 9番陪審員
- 「この方のおっしゃることはもっともじゃ」
- 10番陪審員
- 「何を言っておる!ミステリー映画に決まっておろうが!」
- 2番陪審員
- 「なるほど、非常に興味深いですね」
- 3番陪審員
- 「どこが興味深いんだ、このハゲ!」
- 2番陪審員
- 「ハゲハゲ言うな!!」
- 7番陪審員
- 「おい、いつまでこんな議論が続くわけ?こんな茶番に付き合ってられねーぜ!野球の試合に遅れちまうよ!」
- 1番陪審員
- 「じゃあこの映画がミステリー映画か否か、挙手で決め…」
- 3番陪審員
- 「うるさい!ミステリー映画ったらミステリー映画なんだ!貴様が何と言おうと、その事実は変わらん!」
- 9番陪審員
- 「そうかな?この映画の主題は、11番陪審員が皆に語りかける、あのセリフに集約されているんではないじゃろうか。ええと、なんて言ったかのう、最近物忘れが激しくて…」
- 11番陪審員
- 「我々には責任があります。これが民主主義の素晴らしいところです。全く知らない人間の有罪無罪を決める。この評決で私たちに損も得もない。この国が強い理由はここにある」
- 9番陪審員
- 「そうそう、それじゃ」
- 8番陪審員
- 「この民主主義礼賛なセリフは、ひいてはアメリカ礼賛に繋がっている訳ですね」
- 2番陪審員
- 「そんなにイデオロギッシュな映画だったんですか、これ…」
- 4番陪審員
- 「納得したよ。この映画が民主主義を説いた映画であるということを」
- 11番陪審員
- 「道理でアメリカ人がこの映画を好きな訳ですな」
- 5番陪審員
- 「俺、頭悪いから難しいことはよく分からないけど、アンタの言う通りだと思うよ」
- 12番陪審員
- 「ハハン、なるほどね。ボクもそう思うよ!」
- 3番陪審員
- 「俺は誰が何と言おうと、そんな意見には賛同できん!」
- 8番陪審員
- 「確かにイデオロギッシュな面だけにスポットを当ててしまうと、この映画ってちょっと気持ち悪いような気もしますけどね…」
全員「…」
DATA
- 原題/12 Angry Men
- 製作年/1957年
- 製作国/アメリカ
- 上映時間/96分
STAFF
- 監督/シドニー・ルメット
- 脚本/レジナルド・ローズ
- 製作/レジナルド・ローズ、ヘンリー・フォンダ
- 編集/カール・ラーナー
- 音楽/ケニヨン・ホプキンス
- 撮影/ ボリス・カウフマン
CAST
- ヘンリー・フォンダ
- リー・J・コッブ
- マーティン・バルサム
- ジョン・フィードラー
- E・G・マーシャル
- ジャック・クラグマン
- エドワード・ビンズ
- ジャック・ウォーデン
- ジョセフ・スィーニー
- エド・ベグリー
- ジョージ・ヴォスコヴェック
- ロバート・ウェッバー
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