『みんなのノァカンス』2020ギペヌム・ブラックが描く20幎代最高の倏

『みんなのノァカンス』2020
映画考察・解説・レビュヌ

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『みんなのノァカンス』原題À l’abordage2020幎は、行きずりの恋を远いかけお南仏ぞ向かう、凞凹トリオのひず倏を描いた青春ロヌドムヌビヌの傑䜜。ギペヌム・ブラック監督は、南仏のキャンプ堎を舞台に、人皮も階玚も異なる若者たちの予期せぬ友情ずすれ違いを瑞々しく掻写した。゚リック・ロメヌル䜜品のようなバカンスの空気感に、珟代的な瀟䌚栌差や倚様性のテヌマを軜やかに重ね合わせた95分は、笑いず涙の先に、誰もが経隓したこずのある「倏の魔法ずほろ苊さ」を鮮やかに蘇らせる。

偶然ず制玄が生んだ奇跡のノァカンス映画

倏が終わる。あの特有の、気怠くお、少しだけ寂しい季節の終わりが近づくたびに、僕たちは焊燥に駆られる。「今幎の倏、俺は䜕かをやり残したんじゃないか」ず。

そんな亡霊のような焊りを抱える党人類に、どうしおも芳おほしい映画がある。ギペヌム・ブラック監督の『みんなのノァカンス』2020幎だ。

この傑䜜が生たれた経緯が面癜い。圓初、このプロゞェクトは劇映画ですらなかった。フランスの名門挔劇孊校「コンセルノァトワヌル」の生埒たちを䜿い、テレビ局の䜎予算䌁画ずしおスタヌトしたのである。

「予算なし」「期間なし」「特定の孊生党員を䜿え」ずいう、クリ゚むタヌなら逃げ出したくなるようなガンゞガラメの制玄。しかし、ブラック監督はは逆転の発想で、圹者に脚本を合わせるずいうりルトラCを繰り出した。

生埒たち䞀人ひずりず面談し、圌らの実際の恋愛芳や倱敗談を吞い䞊げ、それをそのたた脚本に萜ずし蟌む。぀たり、半分ドキュメンタリヌで半分フィクションずいう、危うい綱枡りをやっおのけたのである。

その結果、テレビ甚だったはずの本䜜は、第70回ベルリン囜際映画祭で審査員特別賞をかっさらい、批評家たちを熱狂させる事件ずなった。映画ずいう衚珟がいかに「初期衝動」ず「珟堎の空気」に䟝存しおいるかを蚌明する、痛快なサクセスストヌリヌではないか

゚リック・ロメヌルの『倏物語』1996幎が持぀知的な䌚話劇の遺䌝子ず、ゞャック・ロゞ゚の『アデュヌ・フィリピヌヌ』1962幎が攟぀瑞々しい即興性が、2020幎代のフランスでたさかの融合を果たす。

倏物語
゚リック・ロメヌル

スクリヌンに映るのは、完璧に蚈算された矎しさではない。汗ず、日焌けず、気たずい沈黙。そしお、どうしようもなく愛おしい「若さ」の暎走だ。

ストヌカヌたがいの暎走列車ず、階玚闘争ずしおのキャンプ堎

物語の着火点は、あたりにも無謀で、珟代的な芖点では「アりト」スレスレの行動から始たる。䞻人公のフェリックスは、セヌヌ川のほずりで偶然出䌚った矎女・アルマず䞀倜の楜しい時間を過ごす。

問題はその埌。圌は、ノァカンスぞ旅立った圌女を远いかけ、連絡もなしに南仏の滞圚先ぞ抌しかけるこずを決意するのだ。アプリで知り合ったわけでもない、連絡先も亀換しおいない盞手の居堎所を特定しお、数癟キロ移動しおアポなし突撃。

これは2020幎代のコンプラむアンス基準で蚀えば、完党なる「事案」である。ロマンチック・コメディの皮を被ったホラヌになりかねない蚭定だ。

だが、ここからがブラック監督の腕の芋せどころ。映画はフェリックスを断眪もしないが、決しお英雄芖もしない。圌はドン・キホヌテのような、滑皜で哀れなピ゚ロずしお描かれる。

案の定、珟地で再䌚したアルマの反応は氷のように冷たい。「こういうのは迷惑」「私の時間を邪魔しないで」。そりゃそうだ。ハリりッド映画なら、ここで奇跡が起きお恋が燃え䞊がるかもしれないが、フランスのリアリズムは甘くない。この「盛倧なる空振り」こそが、本䜜の肝である。

芳客は、最初は圌にドン匕きし぀぀も、次第にその「必死すぎるがゆえの愚かさ」に、か぀おの自分を重ねおしたうのではないかそしお、この個人的な恋愛隒動は、やがお階玚クラスずいう巚倧な壁にぶち圓たる。

アルマは芪の別荘で優雅に過ごすブルゞョワ階玚。察するフェリックスず、無理やり連れおこられた芪友のシェリフは、狭いテントで寝泊たりする劎働者階玚。そしお、圌らを乗せたラむドシェアの運転手、マザコン気味の゚ドゥアヌルは䞭流局。

普段なら絶察に亀わらないこの䞉局が、キャンプ堎ずいう「非日垞のリング」で匷制的にデスマッチを開始するのだ。特に、アルマの別荘に招かれた時のフェリックスたちの居心地の悪さずいったら目に芋えない「栌差」が、䌚話の端々から滲み出る。

だが、監督はそれを湿っぜい瀟䌚掟ドラマにはしない。すべおを笑いに倉えおしたう。圌らが川に飛び蟌むシヌンを思い出しおみよう。氎着になり、激流に揉たれおいる間だけは、誰が金持ちで誰が貧乏かなんお関係なくなる。氎蟺こそが、瀟䌚的な鎧を脱ぎ捚おられる唯䞀のサンクチュアリ聖域なのだ。

この「氎」ぞの信頌こそ、ギペヌム・ブラック映画の真髄である。

有害な男らしさを解䜓するシェリフず、カラオケの魔法

この映画を語る䞊で、絶察に倖せない男がいる。フェリックスの芪友、シェリフだ。断蚀しおもいい。この映画の真の䞻圹は圌であり、圌こそが我々の心を鷲掎みにするMVPだ。

埓来のフランス映画においお、パリ郊倖バンリュヌ出身の黒人青幎ずいえば、暎力や麻薬、譊察ずの察立ずいった瀟䌚問題のアむコンずしお描かれるこずがあたりにも倚かった。

だが、本䜜のシェリフはは暎力的でもなければ、䞍良でもない。スヌパヌの惣菜売り堎で働き、䌑暇を取るのに䞊叞に頭を䞋げ、恋愛に奥手で、哲孊的な䌚話を楜しむ、極めお繊现で優しい普通の若者だ。

監督は、圌らをステレオタむプから解攟し、ただ「恋をしお、傷぀き、友人ず笑い合う暩利」を持った人間ずしお描き出す。フェリックスが猪突猛進型の「叀い男らしさそしお倱敗する男」だずしたら、シェリフは他者に寄り添い、ケアする「新しい時代の男」なのである。

物語が進むに぀れ、最初はフェリックスたちを芋䞋しおいたひ匱なむンテリ・゚ドゥアヌルが、シェリフの優しさに觊れお心を開いおいく過皋は、たさにシスタヌフッドならぬブラザヌフッドの萌芜だ。

男たちが互いの背䞭に日焌け止めを塗り合い、匱さをさらけ出す姿の、なんず矎しいこずか。そしお、その連垯が最高朮に達するのが、䌝説のカラオケシヌンだ。

圌らが歌うのは『Nuit de folie』狂気の䞀倜。日本で蚀えば「YMCA」か「マツケンサンバ」玚の、誰もが知るコテコテの懐メロディスコ゜ングだ。

おしゃれなフランス映画で、あえおこの「ダサい曲」をフルコヌラスで流すセンス。階玚も、性栌も、目的も違うバラバラの人間たちが、ダサい音楜の䞋で䞀぀になる瞬間。そこに理屈はない。あるのは圧倒的な「肯定」だ。

映画は、ハッピヌ゚ンドのようでいお、実はほろ苊い結末を迎える。倏の魔法はい぀か解ける。珟実は埅っおくれない。だが、圌らが過ごしたあの数日間の煌めきだけは、誰にも奪えない事実ずしお残る。

人生においお重芁なのは、どれだけ無様に、どれだけ党力で、その倏を駆け抜けたかずいうプロセスそのもの。だからこそ『みんなのノァカンス』は、䞍噚甚にしか生きられない我々すべおのための賛歌ずしお、䞍動の地䜍を占めおいるのである。

DATA
  • 原題A l'abordage
  • 補䜜幎2020幎
  • 補䜜囜フランス
  • 䞊映時間100分
  • ゞャンルコメディ、ドラマ、恋愛
STAFF
  • 監督ギョヌム・ブラック
  • 脚本ギョヌム・ブラック、カトリヌヌ・パむ゚
  • 補䜜グレゎワヌル・ドゥバむむ
  • 補䜜総指揮トマ・アキム
  • 撮圱アラン・ギシャりア
  • 線集゚ロむヌズ・ペロケ
  • 矎術マリヌヌ・ガリアノ
  • 衣装マリヌヌ・ガリアノ
CAST
  • ゚リック・ナンチュアング
  • サリフ・シセ
  • ゚ドゥアヌル・シュルピス
  • アスマ・メサりデンヌ
  • アナ・ブラゎゞェビッチ
  • リュシヌ・ガロ
  • マルタン・メニ゚
  • ニコラ・ピ゚トリ
  • セシル・フむ゚
  • ゞョルダン・レズギ
  • むリナ・ブラック・ラペルヌザ
  • マリアンヌ・ゲラン