『アパートの鍵貸します』の監督・主演トリオが再び集結した佳作
フランスで大ヒットしたミュージカルを基に、ビリー・ワイルダー、ジャック・レモン、シャーリー・マクレーンの『アパートの鍵貸します』(1960年)トリオが再び結集して撮りあげた、ソフィスティケート・コメディー。
ワイルダーは大のミュージカル嫌いだったため(タモリみたいですね)、ミュージカルをストレートプレイに翻案したという経緯があるのだが、それはまた別の話。
パリの娼婦街を巡回していたジャック・レモン演じる警官が、シャーリー・マクレーン演じる娼婦に恋してしまい、すったもんだの挙げ句彼女のヒモとなる。
毎晩、彼女が客とベッドを共にするのを見ていられず、自らが英国紳士“X卿”に変装し、「500フランで彼女の専用客となる」という妙案を実行するものの、彼女に渡す大金を稼ぐために、彼が毎日必死に働くハメになってしまい…とアウトラインを書いただけでは何が何やらさっぱり分からん!!
相当入り組んだ内容なのだが、ビリー・ワイルダーによる気の利いたパンチラインと軽妙洒脱な語り口によって、コメディー映画にしてはけっこうな尺の143分をあっという間に見せてしまう。
喜劇役者としての才能を遺憾なく発揮するジャック・レモンに、オトコなら誰でも夢中になるぐらいチャーミングこの上ないシャーリー・マクレーンは、さすがの好演。
しかしこの映画の核になっているのは、本編の狂言廻しとも言うべきバー「マスターシュ」のマスター(ルー・ジャコビ)である。
彼はまさに映画内におけるシナリオライターとして物語を支配下に治め、ハチャメチャな物語を拡散させることなくドラマを引き締めていく(逆に言うとマスターが物語を牽引しない中盤はややダレ気味になるんだが)。
ちなみに当初ビリー・ワイルダーは、イルマ役にマリリン・モンロー、バーのマスター役にチャールズ・ロートンを考えていたものの、二人とも’62年に亡くなってしまったために叶わぬ夢となってしまったという経緯があるのだが、それはまた別の話。
そう言えばフジテレビ系ドラマ『王様のレストラン』で、物語の最後に「それはまた別の話」というナレーションが挿入されていたが、これは脚本を書いた三谷幸喜によるビリー・ワイルダーへのオマージュと受け取るべきだろう。
三谷幸喜の作品は、他にもワイルダーの影響を見て取れるのだが、それもまた別の話。
- 原題/Irma la Douce
- 製作年/1963年
- 製作国/アメリカ
- 上映時間/143分
- 監督/ビリー・ワイルダー
- 製作/ビリー・ワイルダー
- 脚本/ビリー・ワイルダー、I・A・L・ダイアモンド
- 撮影/ジョセフ・ラシェル
- 音楽/アンドレ・プレヴィン
- 美術/アレクサンダー・トゥローナー
- 編集/ダニエル・マンデル
- 衣装/ オーリー・ケリー
- ジャック・レモン
- シャーリー・マクレーン
- ルー・ジャコビ
- ブルース・ヤーネル
- ハーシェル・バーナルディ
- ホープ・ホリディ
- ジョアン・ショーリー
- グレイス・リー・ホイットニー
- ハリエット・ヤング
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