トム・クルーズ&キャメロン・ディアスのアウラが炸裂する、スタア至上主義映画
『グロリア』(1980年)のジーナ・ローランズ、『エイリアン』(1979年)のシガニー・ウィーバー、『羊たちの沈黙』(1991年)のジョディ・フォスター。
かつて刺身のツマ程度の扱いしか受けてこなかった女性たちは、やがてフェミニストが大喜びするほどの「強い女性像」へと変貌を遂げた。今や大多数のハリウッド女優たちが、役柄に知性と品位を求めるようになったんである。
そんな中で、キャメロン・ディアスは稀有な存在だ。ハリウッドきってのドル箱女優でありながら、オツムの弱いビッチガールを演じることを厭わない。
『メリーに首ったけ』(1998年)では、ベン・スティーラーが飛ばした精液をジェルがわりに頭につけるという驚愕シーンを披露しているし、『イン・ハー・シューズ』(2005年)では、初っ端からバスルーム・ファックを演じている。アクトレス総“知的化”が進むなか、彼女は一人“痴的化”を推し進めたのだ。
『トップガン』(1986年)で一躍スターダムにのし上がり、キング・オブ・ハリウッドとして君臨しているトム・クルーズもまた、稀有な存在である。彼はどんな役柄にも染まろうとせず、トム・クルーズであることを誇示し続けている。
50歳に手が届こうかという年齢にも関わらず、白い歯をむき出しにしたトム・スマイルは、いまだに青春の香りを漂わせ、マッチョバディを鍛えることに余念がない。
これほどのマネーメイキング・スターが、叶姉妹の取り巻きにいそうな、単細胞のグッド・ルッキング・ガイにしか見えないというのは、色んな意味でスゴイと思う。
ハリウッド屈指のスーパー・スターとはいえ、いささかトウがたったトム&キャメロンが、2010年にスパイ・アクションで共演するとアナウンスされても、ロサンゼルス・タイムズ紙は「若年層がトム&ディアスの映画を観に行くかどうかは甚だギモン」と、辛辣なコメントを寄せたものだ。
そんな批判なんぞどこ吹く風、御年47歳のトム・クルーズが演じるのは、相も変わらず陽気なマッチョガイであり、御年37歳のキャメロン・ディアスが演じるのは、銃撃戦にキャーキャーワーワー言うだけの、オツムの弱いブロンド・ガールである(ビキニ水着のサービス・カットもアリ!)。
彼らは、ブラッド・ピットやジュリア・ロバーツのように、ブランド・イメージを時代に対応させて変化させるのではなく、頑固なまでに陽気なアメリカン・ヒーロー(ヒロイン)を体現し続けている。
『ナイト&デイ』は典型的なスタア至上主義の映画だ。寄る年波に抗うように、オーディエンスが求めるヒーロー&ヒロイン像を演じ続けたゲーリー・クーパー、ケーリー・グラント、マリリン・モンローといった黄金期銀幕スタアがそうであったように。
で、肝心のお話なんだが、あれ?さっき観たばかりなのに、映画の粗筋忘れちゃった。しかし、そんなのどーだっていいのだ!!!これは、心ゆくまでトムとディアスのスタア・オーラを浴びまくるべき映画なのだから。
蓮見重彦は2010年のベスト10映画にこの『ナイト&デイ』をランクインさせたそうだが、さすがの審美眼!ハリウッド映画の真骨頂、ここにあり。
- 原題/Knight and Day
- 製作年/2010年
- 製作国/アメリカ
- 上映時間/110分
- 監督/ジェームズ・マンゴールド
- 製作/トッド・ガーナー、キャシー・コンラッド、スティーヴ・ピンク、ジョー・ロス
- 製作総指揮/アーノン・ミルチャン、E・ベネット・ウォルシュ
- 脚本/パトリック・オニール
- 撮影/フェドン・パパマイケル
- プロダクションデザイン/アンドリュー・メンジース
- 衣装/アリアンヌ・フィリップス
- 編集/クインシー・Z・ガンダーソン、マイケル・マカスカー
- 音楽/ジョン・パウエル
- トム・クルーズ
- キャメロン・ディアス
- ピーター・サースガード
- ヴィオラ・デイヴィス
- ポール・ダノ サイモン
- ジョルディ・モリャ
- フォーク・ヘンチェル
- マギー・グレイス
- デイル・ダイ
- マーク・ブルカス
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