典型的なドタバタ・アクションを、ソフィスティケート・タッチでまとめてしまうワイルダーの至芸
腕のいい職人が手によりをかけた逸品は、時代に風化しないもの。映画作家でいうなら、やっぱりビリー・ワイルダーだ。
芸術家タイプのフェリーニ、ビスコンティ、トリュフォーやゴダールもいいが、時を経てもその面白さを全く失わないのは、彼のような名工タイプの仕事だろう。
基本的に密室劇だった『アパートの鍵貸します』(1960年)に比べて、『お熱いのがお好き』(1959年)ではロケを積極的に行い、空間をうまく利用している。
禁酒法時代のシカゴから端を発し、列車に乗って太陽の燦々と降り注ぐマイアミへ。往年のギャング映画を完全にパロった確信犯的的なノリで、息つく間もなくストーリーは進行する。
ビリー・ワイルダー作品では毎度のことながら、脚本が圧倒的に巧い。『アパートの鍵貸します』では登場人物にフォーカスを当て、微妙な心理描写や小道具の使い方に冴えをみせていたが、「お熱いのがお好き」はそれに加えシチュエーション・コメディーとしてのテイストも加味している。
典型的なドタバタ・アクションを、ソフィスティケートされたタッチでまとめてしまう至芸は、ワイルダーならではだ。
『アパートの鍵貸します』では、悲哀に満ちたサラリーマンをペーソスたっぷりに演じてみせたジャック・レモンだが、彼のコメディアンとしての才能は『お熱いのがお好き』でより十二分に発揮されている。ハイテンションなオカマ芝居はまさに独壇場。
マリリン・モンローはIQ低そうなヴァンプを好演、セクシーといよりはキュートな感じで実によろしい。逆に主役であるはずのトニー・カーティスがあまり目立っていないのが気になるが、コミックの役割はすべてジャック・レモンに預けたんだろう。一応そういう事にしておこう。
マリリン・モンローは可愛いし、ジャック・レモンは面白いし、ビリー・ワイルダーの話術は完璧だし、言うことないだろコレ。おまけに大金持ち役のジョー・E・ブラウンが最後にのたまう有名なセリフ、「Well , Nobody’s perfect.」。
これ聞いた時にはホント、僕はズッコけました。
- 原題/Some Like It Hot
- 製作年/1959年
- 製作国/アメリカ
- 上映時間/121分
- 監督/ビリー・ワイルダー
- 製作/ビリー・ワイルダー
- 原作/R・ソーレン、M・ローガン
- 脚本/ビリー・ワイルダー、I. A. L. ダイアモンド
- 撮影/チャールズ・ラング
- 音楽/アドルフ・ドイッチェ
- 美術/テッド・ハワース
- 編集/アーサー・シュミット
- 衣装/オーリー・ケリー
- マリリン・モンロー
- トニー・カーティス
- ジャック・レモン
- ジョージ・ラフト
- パット・オブライエン
- ジョー・E・ブラウン
- ジョアン・ショーリー
- ジョージ・E・ストーン
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