70年代を代表するRock’n Rollに彩られた、キャメロン・クロウの「ロック中毒者の日記」
僕が敬愛するサブカルライター・川勝正幸氏は、その著書『ポップ中毒者の手記』(1996年)において、「評論するな、感染しろ!」という愛に溢れた金言を残している。
評論活動とは、自分に正直になること、自分を決して偽らないこと、そして、その対象に心からシビれること。『あの頃ペニー・レインと』(2000年)は、その真摯な姿勢を再確認させてくれるキュートな映画だ。
若干15歳で、ローリング・ストーン誌のライターデビューを果たしたキャメロン・クロウ。彼の自伝的作品であるこの映画には、ロックへの限り無い愛情がある。
ドラッグ、セックスばかりがクローズアップされるフラワー・ムーヴメントにおいて、純粋に音楽へのリスペクトを謳った映画は、思いのほか少ない。
ザ・フー、サイモン&ガーファンクル、ディープ・パープル、レッド・ツェッペリン…。70年代を代表するRock’n Rollに彩られながら、キャメロン・クロウの「ロック中毒者の日記」が綴られていく。
そして何といっても、タイトル・ロールのペニー・レーン演じるケイト・ハドソンの素晴らしさよ!かのゴールディ・ホーンのDNAを受け継ぐ、ハリウッドきってのサラブレッド。
自由奔放でいて繊細な神経の持ち主という難しい役柄も、キュートな笑顔と自らの資質で楽々クリア。自分は単なるグルーピーではなく、バンドにインスピレーションを与える「バンド・エイド」としての役割があるのよ、と夢見がちに話す可愛らしさ。
そして自分自身が、缶ビールと交換されたという話を知らされた時の、「ビールの銘柄は何だった?」と聞き返す意地らしさ。しかも彼女は、10代特有の“傷”すらも無防備に演じてみせる。
ちょっと小ぶりな乳房も、俺的にはマル。ドリュー・バリモアにも通じるクッタクのない可愛さは、男心を捕らえて離さない。
青春時代とは、新しい世界をコマ送りのスピードで垣間見るプロセス。ウィリアムはその道程でロックに恋をし、ロック批評に恋をし、そしてオンナのコに恋をした。『あの頃ペニー・レインと』は、恋とロックに関するみずみずしい冒険の記録である。
いやー、僕もこんな青春時代送りたかったですよ。実際には、『稲中卓球部』みたいな学生時代でしたが。
- 原題/Almost Famous
- 製作年/2000年
- 製作国/アメリカ
- 上映時間/123分
- 監督/キャメロン・クロウ
- 脚本/キャメロン・クロウ
- 製作/キャメロン・クロウ、イアン・ブライス
- 撮影/ジョン・トール
- 音楽/ナンシー・ウィルソン
- 美術/クレイ・エー・グリフィス、クレイトン・アール・ハートレイ
- 編集/サー・クライン
- ビリー・クラダップ
- フランシス・マクドーマンド
- ケイト・ハドソン
- パトリック・フュジット
- ジェイソン・リー
- アンナ・パキン
- フィリップ・シーモア・ホフマン
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