在日韓国人という重いテーマを、フットワークの軽い作品にしようという意図は分かる。なんせ監督が行定勲だし、脚本がクドカンだし、主演が窪塚洋介だし。
しかし、なまじニュームービーっぽい序盤の入り方をしたがために、後半が説教臭くみえてしまった。作品全体としてのバランスが、ひどく悪い作品なのである。
民族学校の問題や親友ジョン・イルの死など、青春の蹉跌は容赦なくクボヅカに噛み付いてくる。しかし、そこに痛みは感じられない。
青春の暴走は、時には破壊的行動を産むものだ。しかしクボヅカは山崎努演じる元プロボクサーとの親父と一戦交えるだけで、その体力を消耗してしまう。
そうじゃない、僕らは萩原聖人演じる警官との会話によって主人公の内的問題を解決して欲しくないのだ。恋愛映画にしては恋愛を描ききれず、青春映画にしてはおさまりが良すぎる(まあ、これが等身大の青春って言われればその通りなんだけど)。
度々挿入されるク、ボヅカの「これは俺の恋愛に関する物語だ」というダイアローグが、単なるクドカンのエクスキューズにしか聞こえない。
クボヅカくんの演技はいつものごとし。もうお腹いっぱいです。ヒロインを演じる柴咲コウの人物造型も謎だらけ。
最初はエキゾチックな顔だちとミステリアスな雰囲気で「イーゾ、イーゾ」と思ってたんだが、クボヅカが在日韓国人だと告白するなり「血が汚いってお父さんが言ってた」と地雷発言。
これでお別れと思いきや、最後で「やっぱりアナタが好き!」だなんてぬかしやがって、お前「在日韓国人の体が自分に入ってくるのが恐い」んじゃなかったのか!?
クボヅカがコリアン・ジャパニーズとしての自分と向き合うために、愛する女性からカウンターパンチを食らわざるを得なかった理由は分かる。
それならば、最後でとってつけたように二人がまたくっつく理由なんてありゃしないのだ。あまりにも無茶で無理矢理なハッピーエンドには閉口した。
…とまあ、いろいろ不満はあるが、柴咲コウのパンチラサービスもあったからよしとしよう。しかしできれば、パンチラだけじゃなくて、…。
- 製作年/2001年
- 製作国/日本
- 上映時間/122分
- 監督/行定勲
- 製作/佐藤雅夫、黒澤満
- プロデューサー/天野和人、國松達也、出目宏
- 脚本/宮藤官九郎
- 原作/金城一紀
- 企画/遠藤茂行
- 撮影/柳島克己
- 美術/和田洋
- 編集/今井剛
- 音楽/めいなCo
- 照明/高屋麗
- 録音/柴山申広
- 窪塚洋介
- 柴咲コウ
- 大竹しのぶ
- 山崎努
- 山本太郎
- 新井浩文
- 村田充
- 細山田隆人
- 大杉漣
- 塩見三省
- 萩原聖人
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