感覚的なストーリー展開が気持ちいい、『オープン・ユア・アイズ』のリメイク
トム・クルーズはマスクを被る。
『アイズ・ワイド・ショット』(1999年)におけるマスクとは、間違いなく“内なる性的欲求”のメタファーだった。そして『バニラ・スカイ』(2001年)では、マスクは“自己防衛の手段”として登場する。
現実と幻想の狭間で、端正なルックスを仮面の奥に隠してもがき苦しむトム・クルーズ。この爽やかなハンサム・ガイは、堕落していくヤング・エグゼクティヴを好んで演じてみせる。
ワールドワイドなポピュラリティーを獲得しつつも、『マグノリア』(1999年)では非モテ族に女性の口説き方を伝授する指南役を演じるなど、出演作のチョイスは常にチャレンジングだ。
本作は、アレハンドロ・アメナーバル監督『オープン・ユア・アイズ』(1997年)のリメイク。トム・クルーズ自身がこの映画に衝撃を受け、ハリウッドでの映画化権を獲得した(プロデューサーとして、彼の名前もクレジットされている)。
アメナーバル自身に監督を依頼したもののスゲなく断られ、トムが新たに監督の白羽の矢を当てたのが『ザ・エージェント』(1996年)でタッグを組んだキャメロン・クロウだ。
正直、周囲の評価ほど『ザ・エージェント』の出来には不満だった僕だったが、この『バニラ・スカイ』ではキャメロン・クロウの職人的な語り口が実にいい感じ。
まずは独特のタイム感に裏打ちされた、リズミカルなカッティング。シーンからシーンへの急激なジャンプ・カットも、トム・クルーズのモノローグを挿入するというクラシックな手法で楽々クリア。
Radio Headの『Everything In It’s Right Place』を筆頭に、 Paul McCartney、R.E.M、The Chemical Brothersと、UKロックからテクノまでカバーする音楽センスも二重マル。奥さんが元ハートのナンシー・ウィルソンで、この作品にも音楽サポーティングという形で携わっているのが大きいのだろうけど。
不安定なリズム、感覚的なストーリー展開が気持ちいい『バニラ・スカイ』。ラストで急に説明的になったのが遺憾千万だが、失速しないドライヴ感は二時間強の上映時間を感じさせない。ペネロペ・クルスのひどい英語も御愛嬌。
それでも頑張って英語をしゃべるペネロペの意地らしさにトムも惚れたのかいな。
- 原題/Vanilla Sky
- 製作年/2001年
- 製作国/アメリカ
- 上映時間/137分
- 監督/キャメロン・クロウ
- 脚本/キャメロン・クロウ
- 製作/キャメロン・クロウ、トム・クルーズ、ポーラ・ワグナー
- 製作総指揮/ジョナサン・サンガー
- 撮影/ジョン・トール
- 美術/キャサリン・ハードウィック
- 編集/ジョー・ハッシング、マーク・リヴォルシー
- 音楽/ナンシー・ウィルソン
- トム・クルーズ
- ペネローペ・クルス
- キャメロン・ディアス
- カート・ラッセル
- ジェイソン・リー
- ノア・テイラー
- ジョニー・ガレッキ
- W・アール・ブラウン
- ジェニファー・アスペン
- アリシア・ウィット
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