L.A.コンフィデンシャル/カーティス・ハンソン

L.A.コンフィデンシャル 製作20周年記念版 [Blu-ray]

【思いっきりネタをばらしているので、未見の方はご注意ください。】

その作風から、“アメリカ文学界の狂犬”の異名を持つ、ジェイムズ・エルロイ。特に、『ブラック・ダリア』、『ビッグ・ノーウェア』、『L.A.コンフィデンシャル』『ホワイト・ジャズ』と続く、『暗黒のL.A.』シリーズは、アメリカの暗部を抉る犯罪小説のニュー・バイブルとして、好事家を熱狂させた。

LAコンフィデンシャル(上) (文春文庫)

しかし、その第3作をカーティス・ハンソンが映画化した『L.A.コンフィデンシャル』に、エスクトリームな暴力描写や耽美エロスは皆無。

ブライアン・デ・パルマが映画化した『ブラック・ダリア』が濃厚なノワール性をたたえていたのに対し、『L.A.コンフィデンシャル』は実直すぎるくらいに生真面目な犯罪ドラマとして着地しているんである。

警察学校を卒業したエリート刑事のエド(ガイ・ピアース)、血の気の多い叩き上げの刑事バド(ラッセル・クロウ)、スマートに立ち回る目立ちたがり屋のジャック(ケヴィン・スペイシー)。

カーティス・ハンソンが選択したのは、経歴も信条も異なる3人の刑事がある事件を契機に、「己の正義感」に向き合い、巨悪に立ち向かうというバディ・ムービーだ。そんな映画に、過度な暴力やエロスは不必要なんである。

いま不用意に「エロスは不必要」と書いてしまったが、女優ヴェロニカ・レイクを彷彿とさせる娼婦役をキム・ベイシンガーが演じており、40を過ぎてなおグラマラスな色気が映画を覆い隠していることは確かだ。

しかしながらベイシンガーの映画における役割は、セックス・シンボルとしてのそれではなく、エドやバドを導く精神的母親と言うべきだろう。彼女は正義に猛進する二人の庇護者として、背中をやさしく押すのである。

R指定表現を回避したかわりに、ドラマは実に理知的に構築されている。例えばオープニング。

特ダネ記者のシド(ダニー・デビート)の陽気なモノローグに乗せて、映画は実に軽快に幕を明ける。“物語の語り手”である彼の動向を、我々観客はすっかり安心して見守ってしまうのだ。

終盤で、真犯人であるダドリー・スミス警部(ジェームズ・クロムウェル)によって殺害されてしまい、突然にして映画は“物語の語り手”を失ってしまう。観客の予期をいい意味で裏切る、実に巧みなミスリードだ。

観客が進行を見失わないように、忘れかけた名前が再登場するたび、画面の横半分に回想カットをインサートしてみせたり(実に懐古趣味的な演出だ!)、エンディングでは、エドの供述という形で事件の真相を改めて語り直すなど、語り口は丁寧すぎるくらいに丁寧。

シナリオライター出身のカーティス・ハンソンだけに、「複雑に人間関係が入り乱れる物語を、どう観客に物伝えるか」という命題に対して、真正面から取り組んでいる(どうでもいいが、やたら登場人物がガラスに写り込むカットが多いのは、吸引力のある画が少ないことを危惧したカーティス・ハンソンなりの戦略か?)。

演出としての「コクのなさ」が不満といえば不満だが、役者陣は文句なく素晴らしいし、ストーリーの転がし方も見事。

『L.A.コンフィデンシャル』が、90年代を代表するノワール映画の傑作と言い切ることは、全くもってやぶさかではございません。

DATA
  • 原題/L.A. Confidential
  • 製作年/1997年
  • 製作国/アメリカ
  • 上映時間/138分
STAFF
  • 監督/カーティス・ハンソン
  • 製作/アーノン・ミルチャン、カーティス・ハンソン、マイケル・ネイサンソン
  • 共同製作/ブライアン・ヘルゲランド
  • 製作総指揮/ダン・コルスラッド、デヴィッド・L・ウォルパー
  • 原作/ジェームズ・エルロイ
  • 脚本/ブライアン・ヘルゲランド、カーティス・ハンソン
  • 撮影/ダンテ・スピノッティ
  • プロダクションデザイン/ジェニーン・オッペウォール
  • 美術/ウィリアム・アーノルド
  • 衣装/ルース・マイヤーズ
  • 編集/ピーター・ホーネス
CAST
  • ラッセル・クロウ
  • ガイ・ピアース
  • ケヴィン・スペイシー
  • ジェームズ・クロムウェル
  • キム・ベイシンガー
  • ダニー・デヴィート
  • デヴィッド・ストラザーン
  • ロン・リフキン
  • マット・マッコイ
  • ポール・ギルフォイル
  • グレアム・ベッケル

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