ドジでノロマな『スチュワーデス物語』的ラブコメ
酒もタバコもやめられず、トシと共に増える体重に苦心の日々。結婚にもアセリを感じているけど、彼氏はいないし仕事ではヘマばかり。
そんな32歳の等身大の女性を描いて、ベストセラーになったウーマンズ・バイブルを映画化したのがこの『ブリジット・ジョーンズの日記』(2001年)。舞台はイギリスのノッティングヒルだが、やはりヒュー・グラントが出演していた『ノッティングヒルの恋人』(1999年)といい、この街はすっかりラブコメづいているようである。
物語は典型的すぎるほどのボーイハント・ストーリー。最終的に、セックスにもルックスにも自信満々のヤリ手上司・ヒュー・グラント(今やメイド・イン・グリートブリテンのロマンティック・コメディーには欠かせない人材)よりも、生真面目でトナカイ模様のセーターを着たダサ男のコリン・ファース(イギリス紳士的カタブツ男を演じさせたら天下一品!)を選ぶのは、このテの映画のお約束である。
これ即ち、「真実の愛ってこんな近くにあったのね…知らなかった…」という恋愛映画の基本法則、「灯台もと暗し理論」。古今東西の恋愛映画で繰り返し語られてきた、鉄板の法則だ。
そうだ!そうなのだ!安野モヨコの『ハッピー・マニア』(1995年〜2001年)よろしく、金持ちでエグゼクティブなイケメン探しに奔走している愚かな女子ども!!もっと冷静になって廻りを見回してみたまえ。貧乏でサエナイ醜男が、君の生涯の伴侶としてふさわしいのかもしれんのだぞ。僕は声を大にして、この場をお借りして訴えたい。
それにしても、バニーガールのカッコウをさせられても下品にならず、可愛らしさを全開させるレニー・セルヴィガーはまさしくハマリ役。あんなにオデブなのにとてつもなくキュートというのは、世界七不思議のひとつに挙げていいくらいのサプライズ。
ラスト、下着姿だけでコリン・ファースを追い掛けるシーンが「エロ」にならず「意地らしさ」にみえるのは、世界広しといえども彼女だけだろう。これがジュリア・ロバーツやキャメロン・ディアスだったら、エロ全開になっちゃうもんな。こいつはキャスティングの勝利だ。
しかし彼女自身がキャリアアップしていく様子が、単なる失恋の痛手から立ち直るためだけにみえるのはよろしくない。
これじゃウーマンリブ以前、’60年代の描写だぞ。『アリーmyラブ』(1997年〜2002年)とか『セックス&シティ』(1998年〜2004年)はそのあたりうまく両立していたが、これじゃドジでノロマな『スチュワーデス物語』(1983年〜1984年)とたいして変わらん。まあ微に入り細を穿つことはせず、レニー・セルヴィガーのドジぶりを素直に楽しめってことか。
…どうでもいいけど、お母さんの浮気相手である浅黒い肌のオッサンって、みのもんたにしか見えませんでした。
- 原題/Bridget Jone’s Diary
- 製作年/2001年
- 製作国/イギリス
- 上映時間/97分
- 監督/シャロン・マグワイア
- 製作/ティム・ビーヴァン、エリック・フェルナー、ジョナサン・カヴェンディッシュ
- 原作/ヘレン・フィールディング
- 脚本/ヘレン・フィールディング、アンドリュー・デイヴィス、リチャード・カーティス
- 撮影/スチュアート・ドライバー
- レニー・ゼルウェッガー
- ヒュー・グラント
- コリン・ファース
- ジェンマ・ジョーンズ
- ジム・ブロードベント
- シャーリー・ヘンダーソン
- サリー・フィリップス
- ジェームズ・コリス
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