暴力やセックスに彩られた、アメリカン・ニュー・シネマ第一号
『俺たちに明日はない』に関する1ダース
- 世界で最も影響力のある週刊誌タイムが、暴力やセックスに彩られたアンチモラル・ムービー『俺たちに明日はない』(1967年)を、「新しいアメリカ映画(ニュー・シネマ)」と評したことから、アメリカン・ニュー・シネマの第一号作品として認知されている。
- アメリカン・ニューシネマという言葉は、実は日本のジャーナリズムによって作り上げられた造語。アメリカでは単にニュー・シネマと呼ばれている。
- 本作のプロデューサーを務めたウォーレン・ベイティは、当初フランソワ・トリュフォーやジャン・リュック・ゴダールを監督に迎えようとしていた。トリュフォーは『華氏451』(1966年)の撮影のためにスケジュールが合わず、ゴダールはハリウッド・システムの嫌悪感から打診を断ったらしい。
- ウォーレン・ベイティの実姉シャーリー・マクレーンがボニー役を熱望していたが、ベイティがクライド役に決定したために役を降り、姉弟共演は幻となった。
- ボニー・パーカーとクライド・バロウは、世界恐慌時代に銀行強盗を繰り返した実在のギャング・カップル。ただしクライドがインポだったという事実はなく、映画上の創作である。
- フェイ・ダナウェイのトレンチにベレー帽というクールな出で立ちは、当時流行となった。ただし実際のボニーはダナウェイのような美女ではなく、身長150センチの小柄な女性であった。
- デヴィッド・ニューマンと共同で、シナリオを執筆したロバート・ベントンは、後に『クレイマー、クレイマー』(1979年)でアカデミー監督賞を受賞するなど、アメリカを代表するフィルムメーカーに転身した。
- マイケル・J・フォックスは、車に詳しい不良青年C・W・モスを演じたマイケル・J・ポラードに憧れていたことから、芸名に“J”の字をつけた。
- 『俺たちに明日はない』のリメイク版で、ボニー役にヒラリー・ダフが内定したというニュースを受けて、フェイ・ダナウェイは「せめて本物の女優をキャスティングできなかったの?」とコメント。
- ボニーとクライドが87発の銃弾を受けて絶命する壮絶なラストは、映画史上に残る名シーンのひとつ。踊るかのごとく身もだえて惨殺されることから、後に“死のバレエ”と称された。
- その“死のバレエ”の直前、死を予感したウォーレン・ベイティとフェイ・ダナウェイのアップが素晴らしい。諦めとやるせなさ、お互いの愛情の確認、あらゆる感情が入り交じった二人の表情。個人的には本作のベストショット。
- セックスのことしか考えていない17歳童貞男子の青春を描いた『俺たちに明日はないッス』(2008年)も傑作なので、要チェックなり。
DATA
- 原題/Bonnie and Clyde
- 製作年/1967年
- 製作国/アメリカ
- 上映時間/112分
STAFF
- 監督/アーサー・ペン
- 製作/ウォーレン・ベイティ
- 脚本/デヴィッド・ニューマン、ロバート・ベントン
- 撮影/バーネット・ガフィ
- 音楽/チャールズ・ストラウス
- 美術/ディーン・タヴラリス
- 衣装/セアドラ・ヴァン・ランクル
CAST
- ウォーレン・ベイティ
- フェイ・ダナウェイ
- ジーン・ハックマン
- マイケル・J・ポラード
- エステル・パーソンズ
- デンヴァー・パイル
- ダブ・テイラー
- エヴァンス・エヴァンス
- ジーン・ワイルダー
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