ブラック・パワーの台頭によりWASP復権ならず、という隠しテーマが内包された学園モノ
『チアーズ!』(2000)って言っても乾杯という意味ではない。アングルによってはえらいブサイクに見えるキルスティン・ダンストが、何か吹っ切れたかのようなハイテンションぶりで典型的なアメリカン・ガールを好演する、チアリーディングに青春を燃やす学園モノである。
僕自身は学生時代は極度の引きこもりで、こんな爽やかな学園生活とは無縁であったため、あまりこのテの映画には関心はないのだが、可愛い女の子が太ももも露わに腰を振ったり、髪を振り乱したりするのを鑑賞するのは、わりかし好きである。っていうか大好き。
まずこの映画、ずぇーんずぇんスポ根映画ではないことに刮目すべし!!
弱小チアリーディング部が血を吐くような努力を重ねた結果、ついに栄冠を勝ち取るというようなサクセス・ストーリーに非ず。何てったって主人公たちは、裕福で全米随一の人口を有する、カリフォルニア州のランチョ・カルネ高校の女子高生たち。
日々の暮らしに怯えることなく、恋にチアリーディングに思いっきり全力投球できる典型的WASPなのである。さらにここのチアリーディング部・トロスは、5年連続で全国大会優勝。思いっきり勝ち組なのだ。
そんな彼女たちの振り付けが、実は黒人チーム・クローヴァーズの盗作だったという事実を突きつけられるのが、面白い。
このクローヴァーズ、実力はピカ一だが資金が足りないために、今まで大会に出場したことがないという不遇のチーム。フォーマットは青春学園モノながら、アングロサクソン系WASP VS マイノリティーという対立が、極めて鮮明に浮き彫りにされる。
トロスはオリジナルの振り付けを編み出すべく日々奮闘するも、チアリーディングの特訓シーンは微々たるもの。
あれだけ振り付けに困っていたのに、大金はたいて頼んだ振り付け師がペテン師だと分かってからは(お金で解決しようという安易な決断が、ある意味微笑ましいし妙にリアル)、えらくカンタンに新しい振り付けを習得してしまうのはどうかと思うが、逆にいえばそのような描写にカタルシスを感じる映画ではないという証明ではないだろうか。
結局全国大会で優勝するのはクローヴァーズで、トロスは2位。大会6連覇の夢は絶たれてしまうのだが、キルスティン・ダンストは「優勝した気分よ」と新恋人とキスしてめでたくジ・エンド。うーむ、富裕層ならではの余裕が感じられますな。
結局この映画は、ブラック・パワーの台頭によりWASP復権ならず、という隠しテーマが内包されているんである。たぶん。
- 原題/Bring It On
- 製作年/2000年
- 製作国/アメリカ
- 上映時間/100分
- 監督/ペイトン・リード
- 製作/マーク・エイブラハム、ジョン・ケッチャム
- 製作総指揮/アーミァン・バーンスタイン、マックス・ウォン、ケイトリン・スキャンロン、パディ・カレン
- 脚本/ジェシカ・ベンディンジャー
- 撮影/ショーン・モーワー
- 音楽/クリストフ・ベック
- 音楽監修/ビリー・ゴッドリーブ
- 美術/シャロン・ロモフスキー
- 編集/ラリー・ボック
- キルスティン・ダンスト
- エリザ・ダシュク
- ジェシ・ブラッドフォード
- ガブリエル・ユニオン
- クレア・クレイマー
- ニコール・ビルダーバック
- シャニーナ・ジェルソン
- リニ・ベル
- ネイサン・ウェスト
- ハントリー・リッタ
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