『ダークマン』(1990年)、『キャプテン・スーパーマーケット』と、アメコミオタクを唸らせる映画を上梓し、オバカヒーローものならお任せのサム・ライミ。
そんな彼のもとに舞い込んだビッグ・ロールが、マーベル・コミックスのスーパースター『スパイダーマン』。このビッグ・バジェット・ムービーをサム・ライミはどう料理するのか?彼が導きだした答えはズバリ、直球ど真ん中の青春群像劇だった。
サエない高校生ピーター・パーカーが、特殊能力を得ることによって一躍ヒーローになるという、藤子センセイの『パーマン』的展開をみせながら、青春、恋愛というアメリカンな学園テイストで全体をコーティング。
この映画、ビックリするぐらいに「少年の成長ドラマ」に比重を置いているのだ。という訳でビデオレンタル屋は、この映画を「アクション映画」ではなく「青春ドラマ」のコーナーに置いといた方がイイぞ。
その学園チックなテイストはキャスティングにも顕著。トビー・マグワイアは絵に描いたようなヤサ男ぶりを(これは地か?)発揮し、キルスティン・ダンストは『チアーズ!』のノリをそのまま踏襲、小生意気なカマトト女(これも地か?)を演じ切っている。
「アタシはイケメンしか付き合わないのよ!ダサイ男はお断りよ!」なーんてノリが、おっそろしく現代的!!
何でも二人は実生活でも付き合いだし、すぐ別れてしまったらしいが、既に製作が決定している『スパイダーマン2』への影響は大丈夫か?『バットマン』みたいに突然主役が変わるなんてことはないようにしていただきたい。
だがどうも悪役のグリーン・ゴブリンがとってつけたような役回りで、最後までコイツの行動原理が把握できず。僕なんぞはパンフレットを読んで、はじめて奴の目的が世界征服であったことが分かったくらいだ。
後半になるとヤケにカッティングが雑になり、意味のない小競り合いが延々と続く。「青春モノ」という図式が崩れ、単なる「ヒーローもの」になってしまった瞬間に、この作品の脆弱さが垣間見える。
しかしまあナンダカンダいっても、スパイダーマンが摩天楼を縦横無尽に飛び回る姿を、自在なカメラワークで捉える映像は実に爽快。そう、この映画のキーワードはズバリ「爽快さ」なんである。
ワールド・トレードセンターの崩壊によって公開延期されたこの映画は、それに反比例するがごとくポジティブなパワーを全開させ、なおかつ青春ドラマの爽快さを観るものに与えてくれる。
という訳で大人になったスパイダーマンをどうサム・ライミが料理するのか、もはや青春路線を貫けない第二弾の展開が気にかかるところであります。
- 原題/Spider-Man
- 製作年/2002年
- 製作国/アメリカ
- 上映時間/ 121分
- 監督/サム・ライミ
- 製作/ローラ・ジスキン、イアン・ブライス、アヴィ・アラド
- 製作総指揮/スタン・リー
- 脚本/デヴィッド・コープ
- 撮影/ドン・バージェス
- 音楽/ダニー・エルフマン
- 美術/ニール・スピサック
- 編集/ボブ・ムラウスキー
- トビー・マグアイア
- キルスティン・ダンスト
- ウィレム・デフォー
- ジェームズ・フランコ
- クリフ・ロバートソン
- ローズマリー・ハリス
- ランディ・ポッフォ
- ジョー・マンガニエロ
- マイケル・パパジョン
- テッド・ライミ
- ブルース・キャンベル
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