レトロ・フューチャーなビジュアルを再現した、カルト・ムービーの正統続編
まさか、『トロン:レガシー』(2010年)がこれほど正統な続編映画とは思わなんだ。
言わずもがな、1982年に製作された『トロン』は、世界で初めてコンピューター・グラフィックスを全面導入したカルト・ムービー。メビウスやシド・ミードが参加した幻想的な電脳世界のルックに、我々映画ファンは熱狂した。しかし、お世辞にもそのストーリーラインは予定調和の域を出ず。
ってな訳で、僕はすっかり『トロン:レガシー』は最新のCG&3D技術で新しいルックの創造にチャレンジした映画で、『トロン』とは物語上の関連は何もないと思い込んでいたんである。
しかし実際は、原典をリスペクトしまくり。ケヴィン・フリン役のジェフ・ブリッジスとアラン・ブラッドリー役のブルース・ボックスライトナーが引き続き登板し、前作の悪役エドワード・デリンジャーの息子役でキリアン・マーフィーも出演。
イントロで街がワイヤーフレームで構成されていたり、フリンがライト・ジェットに乗りこむときに「コツは手首の動きだ」と語るセリフは、『トロン』オマージュとしてファンならニヤリだろう。だが、むしろ僕は『トロン:レガシー』を観て『スター・ウォーズ』の影響をおおいに感じた。
豪放磊落だったフリンは、師匠然とした雰囲気と東洋思想を携えて、オビ・ワン・ケノービ的キャラに変貌しているし(衣装もどこかジェダイ騎士っぽい)、追いかけて来るクルーを迎撃するシーンは、『スター・ウォーズ エピソード4/新たなる希望』(1977年)でミレニアム・ファルコン号が敵戦闘機を迎え撃つシーンを想起させる。父子の不和→和解という構図も、ダース・ベイターとルークの親子関係だ。
’82年時点で『トロン』が世界に見せつけた映像は、間違いなく「誰も見たことのないニューなビジュアル」だったが、今作では音楽をダフト・パンクが担当していることでも明らかなように、レトロ・フューチャーなビジュアルを目指している。
「誰もがみたことがある映像をよりフレッシュに」仕立て上げているのだ(ロココ風の寒々とした室内で食事をするシーンは、容易に『2001年宇宙の旅』を思わせる)。そういった意味では、映像のインパクトが薄れたぶん『トロン』を再起動させる意義が本当にあったのかどうか、個人的にはやや懐疑的なり。
映像的に一番目を見張ったのは、『ベンジャミン・バトン 数奇な人生』(2008年)で開発されたコンツアーシステムによる、30代のジェフ・ブリッジスの姿だったりするのだが。
- 原題/TRON: LEGACY
- 製作年/2010年
- 製作国/アメリカ
- 上映時間/ 125分
- 監督/ジョセフ・コシンスキー
- 製作/ショーン・ベイリー、ジェフリー・シルヴァー、スティーヴン・リズバーガー
- 脚本/エディ・キッツィス、アダム・ホロウィッツ
- 撮影/クラウディオ・ミランダ
- プロダクションデザイン/ダーレン・ギルフォード
- 衣装/マイケル・ウィルキンソン
- 音楽/ダフト・パンク
- ギャレット・ヘドランド
- ジェフ・ブリッジス
- オリヴィア・ワイルド
- マイケル・シーン
- ボー・ガレット
- ブルース・ボックスライトナー
- ヤヤ・ダコスタ
- セリンダ・スワン
- ジェームズ・フレイン
- エリザベス・マシス
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