積分的手法によって作られた、堂々たるファンタジー巨編第二章
前作『ロード・オブ・ザ・リング』(2001年)が細かなエピソードを挿入して物語にボリュームをもたせる微分的手法だったのに対し、『ロード・オブ・ザ・リング 二つの塔』(2002年)はヘルム渓谷の戦いという巨大合戦シーンにむかって、物語を直線的に盛り上げていく積分的手法によって作られている。
太い幹が枝分かれしていく構造ではなく、3組に分かれた旅の仲間がそれぞれのクライマックスに向かって集束していくという、実に重層的な構造になっているのだ。
前作では舞台設定の説明に追われて、各キャラクターを掘り下げ切れていなかったが、今回はそれぞれの個性がより発揮されて、ドラマとしての厚みが増した。
前作ではメリーとピピンが一手に引き受けていたコメディリリーフ的役回りを、愛すべきドワーフのギムリが一手に引き受ける。本来なら犬猿の仲であるはずの、エルフ族・レゴラスとの密やかな友情は、見ていて微笑ましい。
それにしても前回はほとんど目立たなかったフロドのお付役サムが、本作は何とカッコイイことか!『グーニーズ』(1985年)の頃は華奢で繊細な少年だったが、今やブクブクに太って見る影もなし。
しかし、ビジュアル的にはイケてないこのサムが、『二つの塔』では陰の主役とも言うべき存在感を発揮しているのである。彼は、“悪”の力に呑み込まれそうになるフロドを“善”へと導く灯台の明かりであり、この冒険の意義を諭す精神的支柱でもあるのだ。
前作では30秒くらいしか登場しなかったゴラムも、今作では重要なパートを担う(彼が小学校時代の同級生の黒沢くんにソックリでビックリした)。
内面の闇(ゴラム)と光(スメアゴル)が、同一人格内で葛藤する様子は、あらゆるクリーチャーは“善”の“悪”の両面を合わせ持つものであり、それが振り子のように揺れ動くものであることを想起させる。
そして、最大の見せ場「ヘルム渓谷の戦い」シーン!日没と共に地平線から現われるウルク=ハイの大軍、それを迎え撃つローハン軍。そのスペクタクル性は、骨が砕かれ肉が切り裂かれる『ブレイブ・ハート』(1995)にも匹敵するゴア描写で保証される。
圧倒されよ!ただただ、圧倒されよ!この映画は上映時間2時間59分じゃ物足りない。そしてピーター・ジャクソンの真価は、最終作『ロード・オブ・ザ・リング 王の帰還』(2004年)で明らかになるだろう。
- 原題/The Lord Of The Rings : The Two Towers
- 製作年/2002年
- 製作国/アメリカ、ニュージーランド
- 上映時間/179分
- 監督/ピーター・ジャクソン
- 脚本/ピーター・ジャクソン
- 製作/ピーター・ジャクソン、バリー・M・オズボーン、フラン・ウォルシュ、ティム・サンダース
- 原作/J・R・R・トールキン
- 脚本/フラン・ウォルシュ、フィリッパ・ボウエン
- 撮影/アンドリュー・レスニー
- 音楽/ハワード・ショア
- イライジャ・ウッド
- イアン・マッケラン
- リヴ・タイラー
- ヴィーゴ・モーテンセン
- ショーン・アスティン
- ケイト・ブランシェット
- バーナード・ヒル
- オーランド・ブルーム
- クリストファー・リー
- ミランダ・オットー
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