妻子がありながら、同じ部署の若いOL梅谷(原知佐子)と不倫を重ねている中年サラリーマンの石野(小林桂樹)。いつもの逢瀬の帰途、近所に住む保険外交員の杉山(織田政雄)とバッタリ遭遇。
後日、その杉山が殺人事件の容疑者として逮捕されてしまう。杉山のアリバイを証明するには、石野の証言が必要。だが不倫の事実をバラしたくない石野は、保身から「彼とは会ってない」と警察に告げてしまう…。
松本清張の短編小説集『黒い画集』の中の一編、『証言』を東宝が映画化。東宝が清張原作モノを製作したのは、この作品が初めてらしい。
橋本忍(脚本)×堀川弘通(監督)という組み合わせは、人脈的には完全に黒澤明直系だが、その内容は小市民の悲劇を描いたサスペンス。高度経済成長期の東京を舞台に、モラルの喪失を鋭くえぐりだす。
いやーとにかくこの映画、配役がナイス。特に、胃に穴が空くんではないか、と思うぐらいに四六時中クラーい顔をしている小林桂樹と対照的に、脳天気な明るさをふりまく原知佐子がイイ。
健康的な肢体は、中年親父の心を鷲掴み。なんつったって、初っ端から下着姿で登場である。仕事と家庭生活で疲れているアラフォー男性の心を癒すのは、やっぱこういう娘なんですかね。
その原知佐子の隣の部屋に住む大学生役が、若かりし頃の児玉清。うわー全然分からんかった!「アタックチャーンス!」と拳を振り上げるインテリなオジサマの面影はなく、ひたすら軽薄極まりないヤサ男を好演。
タッパもあるし、清潔感もあるし、今でも充分に通用するイケメンぶりを発揮している。その児玉清に多額のお金を貸しているチンピラ役に、『刑事コロンボ』の吹き替えでお馴染みの小池朝雄。昔からこんな役ばっかりやってたのか。
ただし、演出はやや不満なり。まるで詰将棋のようにカチッ、カチッと確実に「破滅」へ向かっていく中年サラリーマンの悲劇にも関わらず、堀川弘通の演出はネチネチした粘着性が足りないのか、その悲劇性があまり顕在化してこない。
構図的にもスタイリッシュすぎて、どのシーンもわりあいサラッと流れてしまう印象。うーん、これって作家的資質なのかも。
- 製作年/1960年
- 製作国/日本
- 上映時間/97分
- 監督/堀川弘通
- 製作/三輪礼二
- 原作/松本清張
- 脚本/橋本忍
- 撮影/中井朝一
- 音楽/池野成
- 美術/村木忍
- 録音/藤好昌生
- 照明/森弘充
- 小林桂樹
- 中北千枝子
- 平山瑛子
- 依田宣
- 原知佐子
- 織田政雄
- 菅井きん
- 平田昭彦
- 西村晃
- 児玉清
- 中村伸郎
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