鈴木清順にも通じるアバンギャルドなセンスが光る、シリーズ第二弾
前作『大菩薩峠』(1957年)はなかなかにヒドい話だったが、シリーズ第二弾となる『大菩薩峠 第二部』(1958年)も、虚無的な死生観がさらにスパークして、輪をかけてヒドい話になっとります。
何せ、長谷川裕見子(船越英二の奥さんです。つまり船越英一郎のお母さんですね)演じるお豊が、色キチ旗本に手篭めにされてしまい、世をはかなんで自殺してしまう。
このヒト、第一作でもお浜役で片岡千恵蔵に手篭めにされたうえに殺されてしまっているのだから、ダブルでひどい末路なり。もう初っ端からニヒリズム全開なのだ。
その色キチ旗本・神尾主膳を演じる山形勲が素晴らしすぎる。人間としては最低だけど家柄は最高、それだけを後ろ盾にして跳梁跋扈する傲岸不遜な悪大名。要はテッテーして“嫌な奴”を、ほとんど地としか思えない芝居で演じきっている。
微妙に滑舌が悪い致命的欠陥も、逆に年がら年中酒に酔っぱらっている感じが出ていて、役柄に膨らみを与えているんだから、全てがいい方向に。とにかく僕は山形勲の演技を観ているだけで楽しかったです。
内田吐夢監督の演出もいよいよ快調。突然バックが真っ赤になって、シルエットになった千恵蔵がくるくる回転するショットなんぞ、鈴木清順にも通じるアバンギャルドなセンス。
このシリーズにはある種の官能性が少なからず感じられるのだが、ヴィヴィッドな色の使い方にその理由が秘められているような気がする。
で片岡千恵蔵ですが、今作でも相も変わらず低音ボイスでブツブツブツブツブツブツブツブツブツブツブツブツブツつぶやいているだけなんだが、いやー女にモテることモテること。
彼のためなら生命もいとわないという女性が次から次へと現われ、その母性にほだされて彼も人間らしい心が蘇りそうになるんだが、やっぱり最終的には抗いきれない魔性が頭をもたげ、破滅的人生へと転がって行く。さてはて完結編はどうなりますことやら。
- 製作年/1958年
- 製作国/日本
- 上映時間/105分
- 監督/内田吐夢
- 製作/大川博
- 原作/中里介山
- 脚本/猪俣勝人、柴英三郎
- 企画/玉木潤一郎、南里金春
- 撮影/三木滋人
- 音楽/深井史郎
- 美術/鈴木孝俊
- 編集/宮本信太郎
- 録音/佐々木稔郎
- 片岡千恵蔵
- 中村錦之助
- 東千代之介
- 月形龍之介
- 木暮実千代
- 長谷川裕見子
- 山形勲
- 加賀邦男
- 市川小太夫
- 里見浩太郎
- 片岡栄二郎
- 星美智子
- 丘さとみ
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