レミーのおいしいレストラン/ブラッド・バード、ヤン・ピンカヴァ

レミーのおいしいレストラン [Blu-ray]

ディズニー傘下のピクサーが放った自己言及的アニメ

ルーカスフィルム社のコンピュータ・アニメーション部門を前身とするピクサー・アニメーション・スタジオは、ハイレベルな技術力は高い評価を得ていたものの、恒常的な資金不足に悩まされていた。

アニメ作りに没頭できる製作環境を実現するため、ピクサーはウォルト・ディズニー・ピクチャーズとパートナーシップを締結。ディズニーが宣伝・配給の費用を持つ代わりに、キャラクター著作権と興行収入の半分を受け取るという契約内容だった。

これはお互いにWIN WINな契約で、しばらくピクサーとディズニーの蜜月状態は続いたのだが、『バグズ・ライフ』(1998年)、『モンスターズ・インク』(2001年)、『ファインディング・ニモ』(2003年)とヒット作を連発してピクサーの名声が高まるにつれ、少しずつ両社の関係はギクシャクしていく。

つまりピクサー側が「ディズニーは配給しかしてないのに、興行収入を折半しちゃうってどーなの?キャラクター著作権も向こう持ちだし…」という不平等契約に疑問を抱き始めたんである。

バグズ・ライフ MovieNEX [ブルーレイ+DVD+デジタルコピー(クラウド対応)+MovieNEXワールド] [Blu-ray]

契約の見直しを求めて話し合いが行われたものの、両社の言い分は平行線。このままパートナーシップは解消されるものと思いきや、2006年に突如ディズニーがピクサーを株式交換方式で買収すると発表。

買収総額はおよそ74億ドル、ピクサーCEOのスティーブ・ジョブズはディズニーの筆頭株主となり、同時に役員に就任。かくして、ピクサーはディズニーの100%完全子会社になったんである。

話が長くなってしまったが、『レミーのおいしいレストラン』(2007年)はかのようなオトナの事情を経て、ピクサーがディズニー傘下になってから初めて作られた作品だ。

「料理の腕はピカイチのネズミが、人間の協力を得て厨房に立つ」というストーリーラインは、経済的自立を目指したものの、巨大企業のディズニー傘下に入ってしまったピクサーと、思いっきりシンクロする。

「どんな環境に身を置こうとも、創造性のある仕事はできる!」というメッセージは、そのまま作り手である自分達に向けて発せられた言葉なのかもしれない。

ディズニーの象徴であるネズミが本作の主人公なのは、決して偶然ではない。レミーの並外れた才能によって、グストーのレストランは華やかな成功をおさめるが、最終的には衛生的な問題によってつぶれてしまう(ネズミが料理をつくってるんだから、そりゃトーゼンだ)。

ファンタジア スペシャル・エディション [DVD]

ネズミ=ディズニーは、祝福の神であると同時に災厄の神でもある。これはピクサーのディズニーに対する偽らざる思いだろう。

しかしレストランは、「ラタトゥイユ」という新しい看板を掲げて新しい船出を切る。これまさに、「資本は100%ディズニーになったが、作られるアニメーションは今後も変わらない」という、ピクサーの高らかな意思表明!

『レミーのおいしいレストラン』が、過去のフィルモグラフィーと比較しても破格の面白さなのは、「クリエイトする」という基本姿勢に立ち戻ったスタッフによる並々ならぬ熱量が、スクリーンを覆い尽くしているからなのだ。

パットン・オズワルト、イアン・ホルム、ピーター・オトゥール、ブライアン・デネヒーといった錚々たる吹き替え陣にあって、主人公リングイニを演じるのは、役者でも何でもない、ピクサーの一社員であるルー・ロマーノ氏である。

もともとピクサー作品は、スタッフが仮のセリフをアテてからキャスティング作業に入るらしいのだが、リングイニ役だけは仮収録からそのまま正式出演となってしまったそうな。この一点から考えても、『レミーのおいしいレストラン』は極めて自己言及的な作品なんではないか。

DATA
  • 原題/Ratatouille
  • 製作年/2007年
  • 製作国/アメリカ
  • 上映時間/112分
STAFF
  • 監督/ブラッド・バード、ヤン・ピンカヴァ
  • 製作/ブラッド・ルイス
  • 製作総指揮/ジョン・ラセター、アンドリュー・スタントン
  • 原案/ヤン・ピンカヴァ、ジム・カポビアンコ、ブラッド・バード
  • 脚本/ブラッド・バード
  • 編集/ダレン・T・ホームズ
  • 音楽/マイケル・ジアッチーノ
CAST
  • パットン・オズワルト
  • ルー・ロマーノ
  • イアン・ホルム
  • ジャニーン・ガロファロー
  • ブラッド・ギャレット
  • ピーター・オトゥール
  • ブライアン・デネヒー

アーカイブ

メタ情報

最近の投稿

最近のコメント

カテゴリー