ミッション:インポッシブル/ゴースト・プロトコル

ミッション:インポッシブル/ゴースト・プロトコル [Blu-ray]

センス・オブ・ユーモアが格段に増した、シリーズ屈指の知的エンターテインメント作

かつての『エイリアン』シリーズがそうであったように、『ミッション:インポッシブル』シリーズもまた、監督の資質&個性(&変態性)が存分に発揮できるビッグバジェット・マテリアルである。

しかも『エイリアン』が続きものだったのに対し、一話完結型の『ミッション:インポッシブル』は作品ごとにオリジナル・ストーリーをブチこめるというメリットがあり、ディレクターの創造性はさらにかきたてられた。

ブライアン・デ・パルマは、めくるめくカメラワークでスパイ・アクションの王道を貫き、ジョン・ウーは、いつものように教会で白いハトを飛ばしつつ、拳と拳がぶつかりあう肉弾戦を描いた。

そしてTV屋出身のJ・J・エイブラムスは、2時間強の上映時間にこれでもか!というくらいコンテンツを詰め込んで、ノンストップ・アクションの強度を揺るぎないものにせんと企んだんである。

J・J・エイブラムスの節操のない、しかしながら的を射た戦略によって、『ミッション:インポッシブル』シリーズには新しい地平が築かれる。

うむ、確かにまぎれもなく『M:i:III』は傑作だった。そして今回の第4弾は、J・J・エイブラムスがプロデューサーに鎮座する「エイブラムス体制」を維持しつつ、アニメーション界からブラッド・バードを監督に起用するという、奇策に打って出たのである!

『Mr.インクレディブル』や『レミーのおいしいレストラン』で、今やアニメーション監督として不動の地位を築いているブラッド・バードだが、もともと実写への関心は並々ならぬものがあったらしい。

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実際、1906年のサンフランシスコ大地震を題材にした実録本、『1906』の映画化に向けてシナリオも準備していたらしい。

結局ナンダカンダでこの企画は流れてしまい、意気消沈していた彼に、J・J・エイブラムスが「じゃあ『ミッション:インポッシブル』を手がけてみる気はないか?」と声をかけたのだという。

実現不可能なカメラワークが縦横無尽に駆使されるアニメーションと違い、実写映画では表現手段が制限されてしまう…というのは誤りだ。今やCGによって、「実現不可能なカメラワーク」なんぞ存在しないんである。何でも彼は、矢継ぎ早に展開されるカメラワークをスタッフに理解してもらうため、シークエンスごとにアニマティックを製作し、緻密に動きを説明したという。

彼の脳内には、複雑なアクション・シーンがあらかじめ構築されていたのだろう(クライマックスの立体駐車場のバトル・シーンは、その良い例)。この感性こそ、『ミッション:インポッシブル/ゴースト・プロトコル』最大の武器である。

とにかく冒頭から終わりまで、アクション・シーンのつるべ打ち。しかしながら、トム・クルーズ演じるイーサン・ハントが今回一発の銃弾も撃っていないことでも明らかなように、単なる銃撃戦オンリーではない。

オリジナルTVシリーズのスピリットを正統に継承した、騙しあいっこ(コン・ゲーム)が核になっているのだ。クレムリン宮殿潜入の際には、簡易スクリーンに映写したCG映像で警備員を騙し、核弾頭の発射コードを手に入れる際には、売り手と買い手側それぞれに成り済まして相手を騙す。

数百人単位で人がバラバラと死んで行く『ダイ・ハード』(1988)のブルース・ウィリスや、ドラマ『24』のキーファー・サザーランドとは異なり、無駄な血はなるべく流さないというコンセプトが、この作品を一級の知的エンターテインメントに昇華させている。

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クレムリン宮殿爆破やドバイ・タワーの絶壁クライミング、そして砂嵐のなかのチェイス・シーンなど、映像の強度も強し。電磁特殊グローブ、フェイスマスク、コンタクトレンズ式スキャナーなどなど、スパイ道具もステキにアップデート。

J・J・エイブラムスが築き上げた『ミッション:インポッシブル』シリーズの地平上にありながらも、スパイ・アクションのスペックは格段に向上している。

そして何よりも本作の成功に多いに寄与しているのが、言わずもがな!!我らがサイモン・ペッーーーーグ!である。前作にも刺身のツマ程度に登場していたが、今回は出演時間が大幅アップ。

『ホット・ファズ -俺たちスーパーポリスメン!』(2007)や『宇宙人ポール』(2011)で、イケてない非リア充男を演じていた彼だが、今作でもどこか憎めないハッカー役を怪演。シリアス路線だった『M:i:III』に比べ、センス・オブ・ユーモアが格段に増しているのだ。

シャア・アズナブルみたいな人類一掃論を唱える、敵役のカート・ヘンドリクス(ミカエル・ニクヴィスト)が、単なる科学者にしかすぎないのに強すぎじゃね?とか、ツッコミどころはところどころあるにせよ、ここまでサービス精神に溢れた娯楽大作を作っていただければ、ヤボを言う必要はなし。

個人的にはシリーズ最高傑作。今後は、50歳近いトム・クルーズがいつまでイーサン・ハントを演じきれるかの、タイム・レースになることだろう。

DATA
  • 原題/Mission: Impossible - Ghost Protocol
  • 製作年/2011年
  • 製作国/アメリカ
  • 上映時間/132分
STAFF
  • 監督/ブラッド・バード
  • 製作/トム・クルーズ、J・J・エイブラムス、ブライアン・バーク
  • 製作総指揮/ジェフリー・チャーノフ、デヴィッド・エリソン、ポール・シュウェイク、デイナ・ゴールドバーグ
  • 原作/ブルース・ゲラー
  • 脚本/ジョシュ・アッペルバウム、アンドレ・ネメック
  • 撮影/ロバート・エルスウィット
  • 衣装/マイケル・カプラン
  • 編集/ポール・ハーシュ
  • 音楽/マイケル・ジアッキノ
CAST
  • トム・クルーズ
  • ジェレミー・レナー
  • サイモン・ペッグ
  • ポーラ・パットン
  • ミカエル・ニクヴィスト
  • ウラジミール・マシコフ
  • ジョシュ・ホロウェイ
  • アニル・カプール
  • レア・セドゥー
  • ミラジ・グルビッチ
  • サムリ・エーデルマン
  • トム・ウィルキンソン

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