ウォーリー/アンドリュー・スタントン

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冬が終わったら春が来るように、あるいは地球が24時間かけてゆっくりと自転するように、ピクサー・スタジオが常にハイレベルのアニメーション作品を供給していることも、もはや宇宙的常識である。

アニメIQの高い人材をワールドワイドに選りすぐり、2~3年のスパンでマスターピースを連発。観ているこっち側も相当にハードルが高くなっているのだが、期待に毎回きっちり応えていく鉄板の安定感に、敬服の念を新たにするばかり。

『ウォーリー』もまた、ハイレベルの作画力&シナリオ(しかも押し付けがましくない程度にエコ思想も織り込んで!)で、過去のピクサー・フィルモグラフィーにヒケをとらない高水準作だ。

舞台は29世紀の地球。緑は枯れ果て、地球はゴミの山が積み上げられた荒野と化している。『ブレードランナー』を嚆矢に、『未来世紀ブラジル』や『マッドマックス2』で描かれたディストピアが提示されている。

主人公は、ゴミ収拾を700年間続けている地球最後のロボット、ウォーリー(映画『ショート・サーキット』のナンバー・ファイブに激似!)。彼の唯一の楽しみは、往年の傑作ミュージカル映画『ハロー・ドーリー!』を鑑賞すること。

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ユーモラスながらも哀切に満ちたタッチで、ウォーリーの日常がサイレント映画の手法で綴られる。現在では死滅してしまった「ミュージカル映画」「サイレント映画」に敬意を持って目配せしている時点で、僕なんぞは「もうこれだけでオッケー!」と快哉を叫びたくなる。

ほのぼのデイズを静的なトーンで描いた前半とは打って変わり、後半は巨大宇宙船アクシオム艦内でいかにもピクサーらしい派手なアクションが炸裂。

縦横無尽に動き回るウォーリーとイヴを観ているだけで、アニメーションならではの運動的な快感がドーパミンを刺激しまくり。前半部と後半部の鮮やかなタッチの描き分けにより、『ウォーリー』は97分の短い尺ながらも、深く豊かな映画体験ができる仕掛けになっているのだ。

さらに本作の成功は、無機質・無感情な存在のはずのウォーリーが、人間以上に表情豊かで茶目っ気のあるキャラクターとして、血肉の通ったロボット(明らかに矛盾した表現ですが)に描かれていることにある。

双眼鏡のような形の目の中心部を可動式にすることによって、角度の付け具合で様々な表情を見せてくれるのだ。まさに、「生命のないものに生命を吹き込んだ」典型例だろう。

『スター・ウォーズ』でサウンド・デザインを手がけたベン・バートが、ウォーリーの「声」を担当しているのもポイント。人間以上に人間的感情をかいま見せるR2-D2のビープ音を創造した経験を活かし、細やかな感情の機微を丁寧に表現。

ウォーリーが再起動したときにMacintoshの起動音が流れたりするのも、スティーブ・ジョブスがピクサーの執行役員だったことに起因するグッド・アイディア!

でもって、この映画が最も大切に描こうとしているのは、「手と手をつなぐ」という、最もシンプルな愛情表現だったりする。ウォーリーとイヴが最後に手をつなぐショットの、何と神々しいことよ!

考えてみれば、細田守の傑作アニメ『サマーウォーズ』も、「手と手をつなぐ」ことが主題として織り込まれていたが、このモチーフが全世界的に伝播しているのか?と、軽くアニメ界のシンクロニシティーに想いを馳せてしまったり。

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真正面からエコロジーを語るのではなく、あくまで娯楽大作としてストーテリングを全うしている心意気も買い。善意に満ちた映画と見せかけて、最後の最後に流れるロゴマークが「BNL」だったりするなど、さらりとブラックジョークをインサートさせる手つきも小面憎し!

とまあ絶賛モードの『ウォーリー』でありますが、僕にはどうしてもピクサー・アニメが「頭の良い連中がたっぷりの時間と予算をかけて作った、頭のいい映画」という風に感じられて、「この映画のためなら、手を携えて朽ち果ててもいい!」という気持ちには、何故だかなれないのである。

見渡す限りどこまでも計算し尽くされた完全性ゆえに、はたまたツッコミどころがなさすぎるがゆえに、偏愛の対象に成り得ないのだ。

僕が宮崎駿を偏愛するのは、そこかしこに封印しきれないロリコン性(=性癖)と狂ったビジョン(=脳内映像)が点在しているから。やっぱ、映画ってある種の変態性がないとつまんないですよね。

DATA
  • 原題/WALL-E
  • 製作年/2008年
  • 製作国/アメリカ
  • 上映時間/97分
STAFF
  • 監督/アンドリュー・スタントン
  • 製作/ジム・モリス
  • 製作総指揮/ジョン・ラセター、ピーター・ドクター
  • 原案/アンドリュー・スタントン、ピート・ドクター
  • 脚本/アンドリュー・スタントン、ジム・リアドン
  • プロダクションデザイン/ラルフ・エグルストン
  • 音楽/トーマス・ニューマン
  • サウンドデザイン/ベン・バート
CAST
  • ベン・バート
  • エリッサ・ナイト
  • ジェフ・ガーリン
  • フレッド・ウィラード
  • ジョン・ラッツェンバーガー
  • キャシー・ナジミー
  • シガーニー・ウィーヴァー

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