HOME > MUSIC> LEVEL3/Perfume

LEVEL3/Perfume

『LEVEL3』──テクノロジーと身体が交わるポップの新境地

『LEVEL3』(2013年)は、Perfumeがユニバーサル移籍後に発表した5作目のアルバム。中田ヤスタカが構築したテクノポップの美学を再定義し、アイドル・ポップの枠を越えて世界規模のポップ・アートへと昇華させた。ドラムンベース、トランス、EDMなど多層的なリズム構造が融合し、声はもはや言語ではなく音響素材として機能する。テクノロジーと身体が交錯する“未来のポップ”の到達点である。

国内から世界へ──アイドルの枠を越えた進化の証明

Perfumeの5作目となる『LEVEL3』(2013年)は、タイトルこそスライムを倒す程度の“レベル3”だが、その実態は、もはや竜王すら一撃で沈めるほどの完成度を誇る。中田ヤスタカが築き上げたテクノポップの美学が、J-POPの枠を超えて世界規模のポップ・アートへと昇華した瞬間だった。

2011年の『JPN』を最後に、Perfumeは徳間ジャパンからユニバーサルJへと移籍した。それは単なるレーベルの変更ではなく、「国内完結型のアイドル」から「グローバルなエレクトロニック・アクト」への変貌を意味していた。

『Perfume WORLD TOUR 1st』によってアジア圏を席巻し、全世界116カ国のiTunesで配信されたトラック群は、PerfumeがもはやJ-POPの内部に留まる存在ではないことを宣言していた。

12歳で広島からデビューした3人の少女たちは、25歳を迎え、成熟した表現者へと成長する。特にのっちの透明感と孤高さ、かしゆかの静かな妖艶さ、そしてあ〜ちゃんの明るい包容力が、それぞれ異なるベクトルでPerfumeという“ユニットの総体”を構築している。

その魅力は単なる可愛らしさの延長ではなく、テクノロジーと肉体の交錯点に立つ現代的存在としての“ポップの哲学”を体現している。

サウンド・プロダクションの転換──J-POPの文法を再設計する

『JPN』が「国産テクノポップの極致」であったなら、『LEVEL3』は“世界仕様のポップ・デザイン”を志向したアルバムである。中田ヤスタカはここで、クラブミュージックの多層的構造を、アイドル・ポップというフォーマットに大胆に移植している。

M-6「未来のミュージアム」には、初期Perfumeを想起させるレトロテクノの系譜が息づくが、M-7「Party Maker」では、トランスのエクスタシーを取り込んだ拡張的構造が採用される。

M-9「ポイント」ではドラムンベースの速度感が全体を駆動し、楽曲はもはやポップスというよりも、サウンド・インスタレーションのように聴こえる。

アルバム全体に漂うのは、均整の取れた構築美と、そこに潜む人間的な呼吸のリズムだ。ヤスタカがCapsuleやきゃりーぱみゅぱみゅで実践してきたクラブ的美学を、Perfumeという“偶像的身体”を介して再翻訳したことで、音楽は一段と抽象度を増している。ここで彼が行ったのは、J-POPの再設計であり、同時に“日本的テクノ”の再定義だった。

M-13「Spending all my time」は、全編英語詞で構成されたPerfume初のEDMトラックであり、そのイントロのユーロビート的展開からは、既存のPerfume像を超えた“国境なきポップ”の萌芽が見える。

この楽曲では、歌詞の意味がほとんど排除され、代わりに声そのものが音響的素材として機能する。Perfumeのボーカルは、メロディを担う以上に、リズムと音像の一部としてサウンドの内部に溶けている。

中田ヤスタカのプロダクション哲学において、Perfumeの声は“アイドルの人格”ではなく、“テクスチャーの一要素”である。その非人称的処理が、結果的にPerfumeの表現に超越的な強度を与える。

アイドル性が消失することで、逆にアイドルとしての純度が高まる——この逆説こそが『LEVEL3』の美学的中枢だ。

テクノロジーと身体──未来のポップが立つ場所

『LEVEL3』は、Perfumeがテクノロジーと人間の境界線を横断する存在であることを決定的にした作品といっていいだろう。

レーザー、ホログラム、3Dマッピング、そして中田の精密な音響設計。それらすべてが「Perfume」という媒体を通して統合され、ライブパフォーマンスは音楽と映像、身体と機械の複合的表現へと進化した。

ここで提示されたのは、“未来のポップ”のあり方だ。テクノロジーが人間を模倣するのではなく、人間がテクノロジーと共に変容する。Perfumeはその過程の象徴であり、彼女たちの存在自体が現代文化のひとつのアーキタイプとなっている。

『LEVEL3』は、Perfumeのキャリアにおける分岐点であると同時に、J-POPが世界へと開かれるための理想的な設計図でもあった。可憐さと無機質、身体性と抽象性。あらゆる二項がこのアルバムの中で融合し、“人間とは何か”“音楽とは何か”という問いを静かに響かせる。

Perfumeが提示したのは、アイドルを超えた哲学的装置としてのポップだった。

DATA
  • アーティスト/Perfume
  • 発売年/2013年
  • レーベル/ユニバーサルJ
PLAY LIST
  1. Enter the Sphere
  2. Spring of Life (Album-mix)
  3. Magic of Love (Album-mix)
  4. Clockwork
  5. 1mm
  6. 未来のミュージアム
  7. Party Maker
  8. ふりかえるといるよ
  9. ポイント
  10. だいじょばない
  11. Handy Man
  12. Sleeping Beauty
  13. Spending all my time (Album-mix)
  14. Dream Land