国民的グループにまで成長したPerfumeの、ポップ・ミュージックのメインストリームたらんとする本気度
広島出身の垢抜けないアイドル・ユニットだったPerfumeは、結成8年目にして紅白歌合戦歌手となり、リリースするシングルが全てバカ売れし、のっちやかしゆかの交際報道が世間を賑わすなど(あーちゃんはどうした?)、押しも押されぬ国民的グループにまで成長した。
今や、かつてのモー娘。のように、その一挙手一投足が世のサブカル男子から分析される対象に。それはつまり、中田ヤスタカがクリエイトした楽曲もまた構造分析されてしまうということだ。
前作『GAME』(2008年)でハウシーなクラブ・ミュージックに舵を切った中田ヤスタカは、3枚目のアルバム『トライアングル』(2009年)をドロップするにあたって、どのような戦略を立てたのか。
リリース直後から耳の肥えたリスナーから様々なレビューがWEB上にアップされているが、「前作から大きな方向転換はなく、ダンサブルなテクノ・ポップ・サウンドをさらにブラッシュアップさせている」というのが多勢の意見のようである。
確かに一聴したところ、サウンド面で大きな刷新はないように思える。しかし中田ヤスタカの役割は、「マスの市場でどれだけポピュラリティーを獲得できるか」という単なるサウンド・クリエイションから、メディアミックスにも目配せしたトータル・コーディネーションというフェーズにまで移行した。
砂原良徳の『The Sound Of ’70s』(1998年)を思わせるアナログ・シンセが気持ちいいM-1『Take off』、タイトルからしてエアライン・テイストを踏襲したM-5『Night Flight』は、彼女たちがキャビンアテンダントに扮したCM「エスキモーpino」と共振。
「だんだん好きになる 気になる」のフレーズがリフレインするM-4『edge』は、彼女たちの冠番組『気になる子ちゃん」を思いっきり意識させる。こりゃ完全に確信犯な手つきだ。
アゲアゲなイントロから、M-2『love the world』、M-3『Dream Fighter』とシングル・ナンバーが並ぶラインナップは無敵の安定度を誇り、一転してM-6『Kiss And Music』ではアダルティーなリリックが印象的なダウンテンポ・ナンバーに。
M-8『I Still Love U』はオートチューン薄めのユーロビート、M-10『Speed Of Sound』はファンキーなディスコ・チューンと流れ込んで行く展開は、これまでのアルバムにはなかったバリエーションの豊かさだ。
中田ヤスタカのラディカルな実験工房だったPerfumeは、もはやそれ自体が巨大産業にまで肥大化してしまった。
『Perfume ~Complete Best~』(2006年)のチープなテクノ・ポップではなく、『GAME』のCapseleと近接したクラブ・ミュージックでもなく、あらゆるエレクトロニック・サウンドに目配せした『トライアングル』は、ポップ・ミュージックのメインストリームたらんとする、Perfumeの揺るぎない自信が見え隠れする。
要はまあ、今作も傑作!ということであります。
- アーティスト/Perfume
- 発売年/2009年
- レーベル/徳間ジャパンコミュニケーションズ
- Take off
- love the world
- Dream Fighter
- edge < -mix>
- NIGHT FLIGHT
- Kiss and Music
- Zero Gravity
- I still love U
- The best thing
- Speed of Sound
- ワンルーム・ディスコ
- 願い
最近のコメント