2026/5/3

『GAME』(2008)徹底解説|フロアを揺らすテクノポップの衝撃

『GAME』(2008年/Perfume)
楽曲背景と意味を深掘り考察・批評・レビュー

10段階評価
9
GREAT

概要

『GAME』(2008年)は、Perfumeが発表した通算2枚目(メジャー1枚目)のアルバム。本作はオリコン週間チャートで1位を獲得。テクノ・ポップ・ユニットとしては、1983年のYMO『浮気なぼくら』以来、約25年ぶりとなる歴史的快挙を成し遂げた。Perfumeはそれまでのレトロなテクノ・ポップという枠組みから完全に脱却。プロデューサー・中田ヤスタカの手により、太いベースラインと重厚なキックがフロアを揺らす、本格的なエレクトロ・ハウスへと劇的な進化を遂げている。

受賞歴
  • 第50回日本レコード大賞:優秀作品賞
  • 第1回CDショップ大賞:準大賞
  • 2009年ミュージック・マガジン:年間ベスト・アルバム Jポップ/歌謡曲部門 第1位
目次

YMO以来の歴史的快挙と、スターダムへの駆け足の軌跡

まさか、本当にこんな日が来るとは思わなんだ。

我らがPerfumeのセカンド・アルバム『GAME』(2008年)が、発売初週で15.4万枚という驚異的なセールスを叩き出し、オリコンの週間アルバムランキングで堂々の1位を獲得したのである。

テクノ・ポップのユニットが同チャートで首位に立つのは、あのイエロー・マジック・オーケストラの『浮気なぼくら』(1983年)以来、実に24年11ヶ月ぶりという歴史的な快挙だった。

思えば、私が武蔵野美術大学の芸術祭で彼女たちの特設ステージを初めて目撃したのが、ブレイク前夜の2006年のこと。あの時、天衣無縫な可愛らしさと天地無用なキレのあるパフォーマンスで僕の心を撃ち抜き、「彼女たちは将来、絶対に大物になる!」と確信した直感は、決して間違っていなかった。

彼女たちはそこからほんのわずかな期間で、文字通り駆け足で日本のポップ・ミュージックの頂点へと上り詰めてしまったのである。

フロア仕様の先鋭的エレクトロニカ

というわけで、興奮も冷めやらぬまま寝る間も惜しんでこの『GAME』をリピートし続けたわけだが、ここには明確な「モードの切替」が存在する。

インディーズ時代を彩った『モノクロームエフェクト』(2004年)や『ビタミンドロップ』(2004年)といった、どこか垢抜けないレトロなテクノ・ポップ路線(もちろん、それらも意図的で緻密な計算の産物だったが)とは、本作で完全に訣別を果たしているのだ。

かつての80年代テクノ歌謡を思わせる愛らしいピコピコとしたアイドル・ポップから、ブリービーな太いベースラインと重いキック音がフロアを直接揺らす、本格的なエレクトロニカ・ハウスへと見事なシフトチェンジを遂げている。

たとえば収録楽曲の『セラミックガール』(2008年)におけるアナログ・シンセサイザーの攻撃的な使い方などは、もはやダフト・パンクの音響設計そのものではないか。

公共広告機構(現・ACジャパン)の環境キャンペーンCMソングとして起用され、ブレイクの決定的な引き金となった『ポリリズム』(2007年)の大ヒットによって、このスタイリッシュで硬質なエレクトリック・サウンドは、Perfumeというグループの揺るぎないデファクトスタンダードとなった。

しかし、よくよく考えてみれば、複数の異なる拍子を同時に進行させる「変拍子(ポリリズム)」という極めて前衛的な手法を、お茶の間で誰もが口ずさめるほどキャッチーなポップスへと紡ぎ上げてしまうこと自体が、とてつもない音楽的魔法である。

「アキバ系×渋谷系=アキシブ系」などという、一時メディアが好んで使った意味不明なキャッチフレーズを日本刀で一刀両断に斬り捨てるほどの、異常なまでに精緻なサウンド・プロダクションがここには構築されているのだ。

究極の匿名性、そこから溢れ出すパーソナリティー

さらに言えば、『GAME』は、作詞・作曲・編曲のすべてのイニシアチブを完全に掌握したプロデューサー、中田ヤスタカが、Perfumeを己の音楽的色彩で完璧に染め上げた、非常にパーソナルな色合いの強いアルバムでもある。

歌手としての生々しい肉声や個性を、まるで無機質な楽器の一部のように均一化してしまう強烈なヴォーカル・エフェクト(オートチューン)。そのストイックなまでに徹底されたサウンド・デザインは、もはや彼自身のメイン・プロジェクトであるCAPSULEとの音楽的差異を見つけ出すのが困難なほどの領域に達している。

しかしながら、ここからがPerfumeの最大の魔法であり、ミステリー。西脇綾香(あ~ちゃん)、樫野有香(かしゆか)、大本彩乃(のっち)の3人は、この極めて匿名性が高く無機質なエレクトロ・ミュージックのなかに埋没するどころか、むしろ逆に、バラエティ番組やライブMCなどで見せる磁場の強いパーソナリティーを、お茶の間へ向けて爆発的に発揮してしまったのだ。

エフェクトで覆い隠された無個性な音の壁の向こう側から、抗いがたく滲み出てくる3人の生々しく愛らしい人間味。中田ヤスタカの構築する「冷たい電子音」と、彼女たちが放つ「規格外の個性」。

この奇跡のようなアンバランスさから生じた唯一無二の存在感にこそ、Perfumeというグループが持つ底知れぬ末恐ろしさが潜んでいるのである。

参考文献・出典

アルバム情報
プレイリスト
  1. 1. ポリリズム
  2. 2. Plastic Smile
  3. 3. GAME
  4. 4. Baby Cruising Love
  5. 5. チョコレイト・ディスコ
  6. 6. マカロニ
  7. 7. セラミックガール
  8. 8. Take Me Take Me
  9. 9. シークレットシークレット
  10. 10. Butterfly
  11. 11. Twinkle Snow Powdery Snow
  12. 12. Puppy Love
Perfume アルバムレビュー