男女ユニットによる、全編グッド・タイム・ミュージックのオンパレード
出版界では『ソトコト』だとか『クウネル』だとかが創刊され、飲食業界ではローカルな伝統食文化を大切にするスローフードが見直されるなど、数年前からのスローライフブームはもはやブームではなく一つの規格・標準化されたライフスタイルになりつつある。
ミュージックシーンにおいても、そのブームに思いっきり乗っかかるように、和み系・癒し系サウンドが雨後のタケノコのごとくやたら増えてきた印象があるが、正直その音楽はどれも似たり寄ったりで、僕的にはあまり食指が動かないものが多かったように思う(不遜でスイマセン)。
だが、犬童一心監督によるキョンキョン主演映画『グーグーだって猫である』(2008年)の挿入歌『パノラマの丘』を聴いた時には驚いた。プロデューサーの細野晴臣が丁寧に紡いだサントラに寄り添うように、美しく繊細なアコースティック・サウンドが五感に響きわたったんである。
彼らこそ、横浜出身のイシイモモコと、逗子出身の真中やすによる男女ユニット、ハミングキッチンである。
彼らのバックグラウンドである湘南・横浜を中心に音楽活動を展開していた彼らが、初のメジャー作品として、細野晴臣が主催するレーベル「デイジーワールド・ディスク」からリリースしたアルバムが、『ストレンジトマト』(2009年)。
これまさに全編グッド・タイム・ミュージックのオンパレード。イシイモモコのちょっと鼻にかかったような柔らかなヴォーカルにのせて、ジャズ、ブルース、民族音楽といったボーダーレスなサウンドを、シンプルながらもカラフルな装いで紡いでいる。
コトバと音の端々から漏れてくる懐かしい風景。そう、このアルバムからは、どこか記憶の片隅に閉まっていた風景が立ち上ってくる。
- アーティスト/ハミングキッチン
- 発売年/2009年
- レーベル/コロムビアミュージックエンタテインメント
- Taxi Driver
- 風のアトラス
- オムレツムーン
- さくらあめ
- Bonjour Express
- キッチンボイコット
- アイスクリームベイビー
- Daisy’s Cafe
- オルゴールの唄
- BOY
- 浪子不動
- 蒼いカンバス
- パノラマの丘
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