メグ・ライアンが超カワイイのみで一点突破してしまった、びっくりするぐらい中身のないラブ・コメディー
エルンスト・ルビッチ監督の『桃色の店』(1940年)を、現代風にリメイクしたのがこの『ユー・ガット・メール』(1998年)。メグ・ライアンが超カワイイということのみで、一点突破してしまったかのような、びっくりするぐらい中身のないラブ・コメディーである。
『恋人たちの予感』(1989年)の脚本、『めぐり逢えたら』(1993年)の監督・脚本を手がけてきたノーラ・エフロンは、はからずもこの『ユー・ガット・メール』で物語の構成力不足を露呈してしまった。
何がダメって、最初は憎み合っていた二人の男女が次第に相手に惹かれていき、最後は恋に堕ちるという恋愛映画の基本フォーマットが、決定的にバランスを欠いていること。
メグ・ライアンが経営している小さな絵本屋の隣に、トム・ハンクス演じる大型チェーン会社の御曹司が大型書店をオープンさせたことから二人は反目。実はお互いそうとは知らずにインターネットで近況を報告したり励まし合ったりする仲だった、というのが物語のミソ。
途中でトム・ハンクスはその事実を知るのだが、ビジネスはビジネスと割り切り、結局メグの絵本屋を倒産に追い込んでしまう。映画が1時間30分経過してから、トム・ハンクスはやっと重い腰を上げて、ブックストアを手放し恋人とも別れ、おまけに風邪をひいてしまったメグ・ライアンに会いに行く。
つまり、残りおよそ30分間で二人は恋に落ちなければならない訳だ!時間的余裕がないため、物語は性急に展開していく。
トム・ハンクスは事実を知っている者の強みを最大限に活かし、メグ・ライアンのハートを用意周到に操る。“現代のジェームズ・スチュアート”とも称されるトム・ハンクスだからこそ、嫌みがないように見えるが、このあたりの描写は鵺のようなしたたかさと計算高さが強調されて、観客が感情移入できないこと甚だしい。っていうかズルすぎないかアンタ?
最後はセントラルパークで自分の正体を明かし、めでたくメグと結ばれるんだが、後半はトム・ハンクス視点で物語が進行するために、なぜメグ・ライアンが彼に惹かれるようになったのかがさっぱり分からない。『ユー・ガット・メール』は、観客に恋のマジックをかける根拠があまりに薄弱な映画なのだ。
だが、しかし。冒頭でも述べたが、『ユー・ガット・メール』におけるメグ・ライアンのおシャレ番長ぶりはハンパなし。撮影当時彼女はすでに36歳になっていたらしいが、無垢な少女性はますます輝きを増し、ひとつひとつの動作が小動物のように可愛らしく、その笑顔は世界を幸せに包み込む。
えー僕もいろいろイチャモンつけておりますが、なんだかんだ言って結局何度もこの映画観てます。そのたびにメグ・ライアンに心ときめかせております。DVDも所有しておりますが何か問題でも?
ちなみにミクロス・ラズロによる原作では、メグ・ライアン演じる絵本屋の女性がトム・ハンクス演じる億万長者とくっついたはいいものの、最終的には大型書店がオープンするやいなやフラれてしまう、というバッドエンドらしい。ヒドい話だねえ。
- 原題/You’ve Got Mail
- 製作年/1998年
- 製作国/アメリカ
- 上映時間/119分
- 監督/ノーラ・エフロン
- 製作/ノーラ・エフロン、ローレン・シュラー・ドナー
- 製作総指揮/ジュリー・ダーク、G・マック・ブラウン、デリア・エフロン
- 脚本/ノーラ・エフロン、デリア・エフロン
- 原作/ミクロス・ラズロ
- 撮影/ジョン・リンドレイ
- 音楽/ジョージ・フェントン
- 美術/ダン・デイヴィス
- 編集/リチャード・マークス
- 衣装/アルバート・ウォルスキー
- トム・ハンクス
- メグ・ライアン
- グレッグ・キニア
- パーカー・ポージー
- ジーン・ステイプルトン
- スティーヴ・ザーン
- ヘザー・バーンズ
- ダブニー・コールマン
- ジョン・ランドルフ
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