柔らかなトイトロニカから一転、インディー・ロックが主体となったPsappの3rdアルバム
Psappの1stアルバム『Tiger, My Friend』(2004年)、続く2ndアルバム『The Only Thing I Ever Wanted』(2006年)も、おとぎ話から抜け出してきたかのような、柔らかなトイトロニカだった。
しかし、この3rdアルバム『The Camel’s Back』(2008年)はいささか様相が異なる。おもちゃ箱をひっくり返したようなサウンドは影を潜め、ピアノやエレキ・ギターをフィーチャーしたインディー・ロックが主体になっているのだ。
調べたところによれば、メンバーのカリム・クラスマンとガリア・デュラントは前2作のアルバムを成功を受けてワールド・ツアーを敢行し、疲労困憊。その反動で、引きこもりのような状態になってしまったのだという。
宅録でのんびりとトイトロニカに精を出していたイギリス人夫婦が、突然嵐のような日々に巻き込まれてしまったのだから、真っ白な灰になってしまうのも分かります。御愁傷様です。
これまでとガラリと作風が変化したのも、彼らの境遇の変化によるものなのだろう。M-1『I Want That』から、ホーン・セクションとギターを従えてガリアの歌声が響き渡るアップテンポ・ナンバーだったりして、いきなり激しい。
もちろん、時折トイ・ピアノやアコーディオンの音色がフィーチャーされるなど、遊び心満載なアレンジメントは健在。M-11『Homicide』は、全編に渡ってカートゥーンのような擬音が鳴り響く、ヘンテコ・トラックだ。
それでいて、M-10『Screws』のようなセンチメンタルなバラードも収録されていたりするから、小面憎いことこの上なし。音楽マニアの宅録夫婦は嵐のような日々を乗り越えて、リアルな感情をリリックに乗せて歌うアーティストへと覚醒したのだ。
- アーティスト/Psapp
- 発売年/2008年
- レーベル/Domino Records
- I want that
- Part Like Waves
- The Camel’s Back
- Fickle Ghost
- The Monster Song
- Somewhere there is a record of our actions
- Marshrat
- Fix It
- Mister Ant
- Screws
- Homicide
- Parker
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