ビル・エヴァンスのピアノとジム・ホールのギターが絡み合う、クールで思索的なインタープレイ
僕はあまりジャケ買いはしないタチなのだが、『Undercurrent』(1962年)のジャケットには強烈に心惹かれたのを覚えている。
ファッション写真をメインに作品を発表していたというアメリカの女性カメラマン、トニー・フリーゼルによるフロント・カバーは、澄んだ湖底に漂う白いドレスの女性のモノクロショット。『リング』(1998年)系Jホラーの不穏さも漂わせつつ、名状しがたい聖性すら感じさせる。残酷なまでに美しい一枚だ。
1962年にニューヨークで録音された『Undercurrent』は、ビル・エヴァンスのピアノとジム・ホールのギターのみで演奏されるコラボレーション作品。
両方ともメロディー楽器であるからして、一般的にピアノとギターのデュオは難しいとされているが、この二大天才が楽器を鳴らせば、もはや細胞レベルで絡み合ってしまう。
クールで思索的なインタープレイ(音楽的会話)は悶絶必至。一方がメロディーラインを弾けば一方がバッキングに徹し、音楽に豊穣さと陰影を付与していく。
M-1『My Funny Valentine』から、疾走感のあるインタープレイが全開。中盤以降、エヴァンスの完全独奏状態を横目でにらみつつ、ジム・ホールが一小節ごとにコードチェンジさせながら、リズム・セクションに徹する展開がスリリングだ。
M-2『I Hear A Rhapsody』ではジム・ホールが、M-3『Dream Gypsy』ではエヴァンスがイントロの主旋律を奏でつつ、鷹揚としたタイム感のなかで煌めくような時間が流れていく。
個人的に好きなのが、M-5『Skating In Central Park』。モダン・ジャズ・カルテットのジョン・ルイスが作曲した、実にキュートな三拍子ワルツである。
こういう曲には余計な装飾なんぞ必要なし。エヴァンスとジム・ホールは引き算の美学で、必要最低限の音だけを丁寧に選択して演奏する(ジム・ホールは、途中から単音しか弾いていなかったりするのだ!)。
なんてシンプルで、なんて美しいんだろう。でも煎じ詰めれば、音楽ってそんなもんなんだろうとも思う。
- アーティスト/Bill Evans & Jim Hall
- 発売年/1962年
- レーベル/Blue Note
- My Funny Valentine
- I Hear A Rhapsody
- Dream Gypsy
- Romain
- Skating In Central Park
- Darn That Dream
- Stairway To The Stars
- I’m Getting Sentimental Over You
- My Funny Valentine (alternate take)
- Romain (alternate take)
最近のコメント