流線形が三たび放つ、ティン・パン・アレイ色強めのコンセプト・アルバム
ユーミンの『流線形’80』(1978年)は、間違いなくシティポップの記念碑的アルバムだった。
そのアルバム・タイトルをユニット名に冠した流線形は、’70年〜’80年代の山下達郎や吉田美奈子らが奏でたAORを21世紀に召喚する、クニモンド瀧口によるソロ・プロジェクト。全てがキラキラと輝いていたTOKYO CITYの喧騒をマジカルに蘇らせる、随一の職人である。
第1作『シティ・ミュージック』(2003年)ではサノトモミ、第2作『TOKYO SNIPER』(2005年)では一十三十一(クレジットでは江口ニカ名義)がヴォーカリストを務めていたが、3作目となる『ナチュラル・ウーマン』(2009年)には比屋定篤子を起用。
沖縄の太陽に育まれた“サウダージ・ヴォイス”と称された彼女の歌声は、伸びやかでクリスタルな輝きに満ちていて、意外なほどアーバンなポップ・サウンドに溶け込んでいる。
クニモンド瀧口によれば、この『ナチュラル・ウーマン』は いしだあゆみ&ティン・パン・アレイ・ファミリーが1977年に発表した『アワー・コネクション』をモチーフにしているという。
本作を初めて聴いたのは10代後半の頃で、「ブルー・ライト・ヨコハマ」のイメージしかなかった当時、衝撃的なアルバムでした。カセットテープで何故か持っていて、ウォークマンで良く聴いていた思い出があります。
小生も聴いたことがなかったので今回『アワー・コネクション』を拝聴してみたが、いしだあゆみの喋るかのような歌声や、鈴木茂の流麗なギターワークももイイが、何よりも細野晴臣の粒立ちのいいベースプレイにウットリ。
今作には、書き下ろしの新曲以外に、比屋定篤子のオリジナル・ナンバー、大貫妙子と八神純子のカヴァー曲がコンパイルされているが、それ以上にベースラインがサウンドを牽引するティン・パン・アレー色が確かに強し。
クニモンド瀧口は、ゼロ年代最後に’70年代ニューミュージックを召喚したのだ。
- アーティスト/流線形と比屋定篤子
- 発売年/2009年
- レーベル/Happiness Records
- ムーンライト・イブニング
- あたらしい日々
- 何もいらない
- まわれ まわれ
- オレンジ色の午後に
- サマー・イン・サマー 想い出は、素肌に焼いて
- メビウス
- ナチュラル・ウーマン
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