生打ちドラム感が気持ちいい、セッションから生まれたSTUTSの2ndアルバム
当たり前の話だけど、サンプラーはあくまでトラックメイクのツールであって、演奏のための道具ではない。だが、16個のドラムパッドを搭載したMPCを自在に操り、リアルタイムにビートメイクしてしまう猛者がいる。STUTSだ。
星野源のゴキゲン・ナンバー『アイデア』で、2番以降ガラリとアレンジが変貌し、サンプラーによる打ち込みサウンドになる展開に驚いた音楽ファンも多いことだろう。実は、それを操っていたのが彼だったんである(僕もこのナンバーで彼の存在を知りました)。
デビュー・アルバム『Pushin’』(2016年)で、ヒップホップ界隈を騒がせた彼が、その真価をいよいよ発揮した2ndアルバムがこの『Eutopia』(2018年)。
ゲスト・ミュージシャンには、鎮座DOPENESS、Campanella、C.O.S.A.、KID FRESINO、JJJ、仙人掌、一十三十一、asuka ando、Maya Hatch、長岡亮介、Phum Viphuritなど、ジャパニーズヒップホップ好きにはタマらないメンツが名を連ねている。
まるでマーティン・デニーのごとくエキゾな『Eutopia Intro』で幕を開けると、M-2『Dream Away』ではゆるふわジャジー・テイストなネオ・ソウル、M-3『Ride』ではゴキゲン・ヒップホップになだれ込む展開に、悶絶必至。
M-6『Paradise』はボサノヴァ、M-8『Circle Interlude』はアシッド・ジャズと、歌モノとインストゥルメンタルをいい塩梅で配置しながら、バリエーション多彩なサウンドが耳を喜ばせてくれる。
打ち込み系のビートメイクが主体だった前作に比べて、今作は生楽器を全面的にフィーチャー。生打ち感のあるドラムが心地よい。ドクター・ドレーに影響を受けたと公言しているだけあって、暖かなシンセ使いもナイスなり。
ちなみにこのアルバムでは、ミュージシャンに実際に演奏してもらって、その音源を元にサンプラーを駆使してトラックを作り上げていったという。単純なサンプリングではないのだ。
ソロ・ワークではなく、セッションから生まれた『Eutopia』。だからこそ、このアルバムにはよりSTUTSのパーソナルな色が滲み出ている。
- アーティスト/STUTS
- 発売年/2018年
- レーベル/SPACE SHOWER MUSIC
- Eutopia Intro
- Dream Away feat. Phum Viphurit
- Ride feat. G Yamazawa, 仙人掌 & Maya Hatch
- Pursuit
- Breeze feat. Daichi Yamamoto
- Paradise (Ever Green)
- Sticky Step feat. 鎮座DOPENESS & Campanella
- Circle Interlude
- Above the Clouds feat. 長岡亮介, C.O.S.A. × KID FRESINO & asuka ando
- Never Been
- Voyager
- FANTASIA feat. 一十三十一
- Eutopia
- Eternity
- Changes feat. JJJ
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