稀代の歌姫ノラ・ジョーンズが唄う、アメリカン・ルーツ・ミュージック
とにかくノラ・ジョーンズのデビュー・アルバム『Come Away With Me』(2002年)は売れに売れまくったし、賞という賞をとりまくった。
売り上げ
1800万枚
グラミー賞
最優秀アルバム賞、最優秀ポップ・ヴォーカル・アルバム賞、最優秀録音賞(ノン・クラシカル)、最優秀新人賞、最優秀レコード賞、最優秀楽曲賞、最優秀女性ポップ・ヴォーカル・パフォーマンス賞、最優秀プロデューサー賞 を受賞
ビルボード
コンテンポラリー・ジャズ・アルバム・チャートで143週連続1位(2002年3月16日付~2004年12月4日付)
いやー、とにかくとんでもない数字が並んでおります。ジャズの名門レーベルであるブルーノートから、若くて美しい、才能あふれる女性シンガーが颯爽と登場したのだから、センセーショナルに取り上げられるのもトーゼンだ。
しかしたぶんこのアルバムは、ジャズという文脈ではなく、広い意味でのアメリカン・ルーツ・ミュージックとして捉えられたんではないか。インド人のシタール奏者ラヴィ・シャンカールを父に持つ彼女のその向こうに、広大に広がるアメリカの大地を見たんではないか。
M-5のアルバムタイトル同名曲『Come Away With Me』はカントリー・ミュージックのテイストが濃厚だし、M-7『Turn Me On』はソウルフルなR&Bナンバーだ。
プロデューサーのアリフ・マーディン自身、「彼女のアルバムをジャンルとしてカテゴライズするのは困難だ」と語っている。スモーキー・ヴォイスと称される彼女の柔らかな歌声が、ノスタルジーすら感じさせるオールド・スタイルのアメリカン・ミュージックを現代に蘇らせた。
後年ウォン・カーウァイが、初の英語作品『マイ・ブルーベリー・ナイツ』(2007年)で彼女を起用したのは、アメリカを舞台にしたロードムービーを描くにあたって、その象徴として最も有効に機能し得る存在だったからだと思う。
だが、僕にはその象徴性が、多分に人工的、作為的な感じがしてしょうがない。失われつつあるアメリカン・ルーツ・ミュージックを、ノラ・ジョーンズという稀代の歌姫の背中に、無理矢理背負わせている、みたいな。
いや、これ本当にいいアルバムですよ。別に他意はないんですが、個人的にそう感じてしまう、というだけです。
- アーティスト/Norah Jones
- 発売年/2002年
- レーベル/Blue Note
- Don’t Know Why
- Seven Years
- Cold Cold Heart
- Feelin’ the Same Way
- Come Away With Me
- Shoot the Moon
- Turn Me On
- Lonestar
- I’ve Got to See You Again
- Painter Song
- One Flight Down
- Nightingale
- The Long Day Is Over
- The Nearness of You
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