元祖メガネ女子による、ウェル・メイドでエスプリの利いた小粋なフレンチ・ジャズ
元祖メガネ女子といえば、個人的にはブロッサム・ディアリーにトドメを刺す。初めて彼女の存在を知ったのは、確か、選曲家の橋本徹によるアプレミディ・レーベルのベストアルバムだったか。
ビリー・ホリデイ、エラ・フィッツジェラルド、サラ・ヴォーンといったソウルフルなジャズ・ヴォーカリストとは一線を画す、キュート&コケティッシュな歌声に一発で心を持ってかれた。
ちょっと鼻にかかったような、ウィスパー・ヴォイスがいいじゃありませんか。まあ何よりもカワイイしね。そんな彼女の代表的なアルバムが、自身の名前をタイトル名に冠した『Blossom Dearie』(1956年)。
レイ・ブラウン(ベース)、ジョー・ジョーンズ(ドラムス)、ハーブ・エリス(ギター)というウエストコースト系ミュージシャンを従えた作品ながら、父親はスコットランド系、母親はノルウェー人、旦那のボビー・ジャスパー(サックス、フルート奏者として有名)はベルギー出身という、コスモポリタンな出自を持つ彼女のヨーロピアンなオサレ感性が息づいている。
1952年~1955年まで、単身フランスに渡ってコーラスグループに参加していたという経歴を持つだけあって、その世界観はウェル・メイドでエスプリの利いた小粋なフレンチ・ジャズ。
M-1の『’Deed I Do』からベースと呼応するように軽快なギターが奏でられて、思わずココロが高鳴ってしまう。M-7『It Might As Well Be Spring』、M-8『Tout Doucement』ではお得意のフランス語も披露。舌足らずな子猫ちゃんヴォーカルに萌えまくりなり。
ブロッサム・ディアリー自身、「本物のパリジェンヌになりたい」とビミョーにイタい発言をしていたぐらいなので、彼女の紡ぐ音楽はちょっと高尚でちょっと気取っており、その小洒落サウンドに嫌悪感を示す本格ジャズ・リスナーも多いだろうが、僕は全然オーケーです。
彼女は2009年2月7日、ニューヨーク州マンハッタンの自宅にて亡くなったが、2000年代以降も精力的にライヴ・パフォーマンスを行っていたそうだから、かえすがえすも生前の彼女の生ライヴが観れなかったが悔やまれます。
- アーティスト/Blossom Dearie
- 発売年/1956年
- レーベル/Verve
- ‘Deed I Do
- Lover Man
- Ev’rything I’ve Got
- Comment Allez-Vous
- More Than You Know
- Thou Swell
- It Might as Well Be Spring
- Tout Doucement
- You for Me
- Now at Last
- I Hear Music
- Wait Till You See Her
- I Won’t Dance
- Fine Spring Morning
- They Say It’s Spring
- Johnny One Note
- Blossom’s Blues
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