70年代は、スラッシャー映画が狂い咲いた時代だった。『鮮血の美学』(72)、『悪魔のいけにえ』(74)、『暗闇にベルが鳴る』(74)、『ハロウィン』(78)。無差別な殺人、吹き上がる血しぶき。タイ・ウェスト監督の『X エックス』(22)は、あからさまにこの時代のスラッシャー・ムービーをフィーチャーした作品だった。そして70年代は、スティーブ・マックイーン主演『ブリット』(68)を嚆矢として、カー・アクション映画が隆盛を誇った時代でもある。『激突!』(71)、『バニシング in 60″』(74)、『トランザム7000』(77)、『ザ・ドライバー』(78)。残酷で野蛮なが、市民権を獲得していった時代と言えるかもしれない。
クエンティン・タランティーノの『デス・プルーフ in グラインドハウス』(07)は、まさにスラッシャー映画とカー・アクション映画にオマージュを捧げた作品と言える。殺人鬼と女性スタントマンたちの激闘!驚愕のカー・アクション!ヒャッホー!現代最強のオタク監督から届けられた、古き良きB級映画へのラブレター。タランティーノは「好きなスラッシャー映画は?」というインタビュアーの質問に対して、こんな風に答えている。
「この映画はスラッシャー映画とカーチェイス映画のハイブリッドだから、それぞれ1つずつ挙げよう。この手のカーチェイス映画でベンチマークしているのは、『バニシング・ポイント』(71)。スラッシャー映画としては、もちろん『ハロウィン』が大好きだよ。でも時間が経つにつれて、『血のバレンタイン』(81)が一番好きになっているかもしれないな」(*)
そう、『デス・プルーフ in グラインドハウス』は“ハイブリッド映画”なのだ。異なるジャンルを一本の映画としてマッシュアップしてしまう、ある意味でヒップホップ的な、ある意味で節操のない手法。そしてタランティーノよりもはるか前に、<正体不明の殺人鬼に追いかけられ>、<派手なカーアクションが炸裂する>、ハイブリッド映画の偉大な…いや、偉大であるかどうかは正直よく分からんが…先行例がある。ジャック・スターレット監督による伝説のカルト映画、『悪魔の追跡』(75)だ。
ぜひご一読ください!
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