殴る。蹴る。殴る。蹴る。真利子哲也監督の代表作『ディストラクション・ベイビーズ』(16)の主人公・泰良(柳楽優弥)は、理由もなく無軌道に暴力を繰り返す。人間関係の軋轢がある訳でも社会的な不満がある訳でもなく、そこに論理的な説明は何も存在しない。ただ「殴りたいから殴る」という、衝動そのものの連鎖がある。
彼の内面には、ぽっかりと空いた空洞のようなものが横たわっていて、その空虚さを埋める手段として、他者を痛めつける行為を選んでいるかのようだ。泰良というキャラクターは、暴力を通してしか“生”を感じることができない、極めて不穏な存在なのである。
続く『宮本から君へ』(19)では、主人公・宮本(池松壮亮)が理不尽な状況を突破するために、拳を振るう。愛する者を守るために、自らの身体を犠牲にしてでも戦う姿は胸アツだ。しかしそれは、決して英雄的な正義ではない。歯が折れ、血にまみれ、全身が傷だらけになりながら突き進む宮本の姿は、むしろ人間の無力さや不完全さをさらけ出している。
ぜひご一読ください!
- 製作年/2025年
- 製作国/日本、台湾、アメリカ
- 上映時間/138分
- ジャンル/サスペンス
- 監督/真利子哲也
- 脚本/真利子哲也
- 撮影/佐々木靖之
- 音楽/ジム・オルーク
- 編集/マチュー・ラクロー
- 美術/ソニア・フォルターツ
- 録音/金地宏晃
- 照明/チャド・ドハティ
- 西島秀俊
- グイ・ルンメイ
- ジュリアン・ワン
- Dear Stranger ディア・ストレンジャー(2025年/日本、台湾、アメリカ)