グロテスク路線まっしぐら。ジャン・ピエール・ジュネが手がけた悪趣味エイリアン
まさかのシリーズ4作目、『エイリアン4』(1997年)である。
しかも原題の『ALIEN RESURRECTION』(復活、再生の意味である)が示すとおり、死んだはずのリプリーまでが復活。ここまでくると、リプリー自身がジェイソンやフレディと同レベルのモンスターみたいなもんである。彼女が大量生産されて、人間を襲い出す日も遠くないだろう。
なんせ監督が、『デリカデッセン』(1991年)や『ロスト・チルドレン』(1995年)のジャン・ピエール・ジュネなもんだから、『エイリアン4』はこれまでになくグロテスク路線まっしぐら。原色を意識的に使用した映像設計はドギツく、悪趣味極まりないことこの上なし。
1作目の『エイリアン』(1979年)で、リドリー・スコットが突き詰めた「静謐な恐怖」は影も形もなく、ひたすら“生理的な気持ち悪さ”に一点集中。どこかキッチュでブラックなテイストが、その香りを際ただせている。
そんな異様な空間のなかで、一服の清涼剤となっているのが我らがウィノナ・ライダーちゃんである。とにかくカワイイ。
全編にわたって不安に怯えたような表情が男心をくすぐるもんだから、辛抱たまりません。大柄でエイリアン以上に恐いシガニー・ウィーバーと並ぶと、そのコントラストでやたら可愛く見えるのは役得ですな。実はウィノナが×××だったというサプライズもあわせてオイシイ役どころだ。
シリーズで一貫してエイリアンに愛された女、リプリーは今回その愛を明確に受け入れる。『エイリアン3』(1992年)で母性の対象を喪失したことによって、エイリアンを胎内に宿し死んでいくという、崇高な愛を成就させた彼女だが、『エイリアン4』では遂にその子供まで産んでしまう。
隠されたテキストであったはずの「リプリーとエイリアンとの愛」を、キッチュに映像化してしまったのが、今回の特色といえる。『エイリアン3』がソフト路線だったとするなら、『エイリアン4』はハードコア獣姦映画なのだ。
しかし、人類+エイリアンのハイブリッドの造型感覚には疑問あり。クリーチャーとしてのエイリアンが完璧すぎるデザインだったのに対し、このハイブリッドver.は単なるスカル野郎でしかない。
あまりにも人間臭い「目」にポイントを置いたのは分かるが(リプリーがわが子を手にかける時の、コイツの悲しそうな表情!)、ややインパクトに欠けた造型感覚と言わざるを得ない。
エイリアンとのセックス(?)という禁断の領域に踏み入れた『エイリアン』シリーズは、これからどこへ行こうとするのか。 明らかに続編を暗示するエンディングには不安と期待で一杯。
現時点では『エイリアン5』の予定はなさそうだが、一体どうなることやら。
- 原題/Alien:Resurrection
- 製作年/1997年
- 製作国/アメリカ
- 上映時間/109分
- 監督/ジャン・ピエール・ジュネ
- 脚本/ジョス・ウェドン
- 製作/ゴードン・キャロル、デヴィッド・ガイラー、ウォルター・ヒル、ビル・バダラート
- 撮影/ダリウス・コンジ
- 音楽/ジョン・シー・フリゼール
- 美術/ナイジェル・フェルプス
- シガニー・ウィーバー
- ウィノナ・ライダー
- ロン・バールマン
- ドミニク・ピノン
- ゲイリー・ダーダン
- マイケル・ウィンコット
- キム・フラワーズ
- ダン・ヘダヤ
- ジェイ・イー・フリーマン
- ブラッド・ドゥーリフ
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