宗教色にシフトチェンジした、人気SFシリーズ第三弾
『エイリアン』(1979年)はリドリー・スコットによるホラー映画、『エイリアン2』(1986年)はジェームズ・キャメロンによるハードエッジなアクション映画と、フィルムメーカーの個性によって、作品のテイストも激変した前2作。
果たして『エイリアン3』(1992年)は、どのようなアプローチで描かれるのか。今作はその点が最大の関心事だったのだが、まさか宗教色でくるとは。うーむ、意外な肩透かしでした。
記念すべき第3作に抜擢されたデヴィッド・フィンチャーは、PV出身の監督らしく、凝りまくった映像のオンパレード。
四つ足エイリアンが囚人を追いかけるシーンを、広角レンズで狙うあたりは才気爆発だが、懲り過ぎたばかりに追うものと追われるものとの距離感が全く伝わらず、説明不足に陥る事態をも招いてしまった。
さすがにPVで鳴らした彼も、劇場用作品処女作ではストーリーテリングのスキル不足を露呈してしまったか。フィンチャー流映像イディオムの飛躍は、次回作『セブン』(1995年)まで待たなければならなかったのだ。
この作品では、前2作とは全く異なる女傑リプリーへのアプローチに注目。『エイリアン2』で救出したはずのニュートの死によって彼女は母性の対象を失い、精神的な空洞を抱えている。
生きている甲斐を見いだすことができず、自己精算をする必要に迫られている。その果てに隠蔽されていた女性性が頭をもたげ、リプリーは男とのセックスにふけったりするのだが(しかも自分から誘って!)、コトが終わった直後、その相手がエイリアンによってアッサリ惨殺されてしまうのは、哀れとしかいいようがない。
結局、リプリーはエイリアンから“選ばれた女”なのだ。生物学に純粋で完璧なエイリアンたちは、彼女が他の人間の男と交わることを決して許さない。何十匹ものエイリアンをたたきのめし、マザー・エイリアンさえ宇宙の彼方にほうり出したリプリーも、最終的には彼等の愛を受け入れざるを得なくなる。
自らの胎内に、エイリアンの幼生が寄生している事実を突き付けられて。うーむ、これほど暴力的で純粋な愛はないんではないか。
衝撃のラスト、エイリアンを道づれに溶鉱炉に飛び込むシーンは、異人種同士の禁じられた愛が結実した瞬間だ。胎内を突き破り、顔を出すエイリアンを愛おしそうに抱きながら落下していくリプリーの顔は、ニュートにかわる母性の対象をみつけた母としての喜びに満ちている。
SF映画界のジャンヌ・ダルクの壮絶な死は、SF獣姦映画としての壮大な幕引きなのだ。かくしてリプリーとエイリアンは結ばれましたとさ。めでたし、めでたし。
- 原題/Alien3
- 製作年/1992年
- 製作国/アメリカ
- 上映時間/114分
- 監督/デヴィッド・フィンチャー
- 製作/ゴードン・キャロル、デヴィッド・ガイラー、ウォルター・ヒル
- 製作総指揮/エズラ・スワードロウ
- 原案/ヴィンセント・ウォード
- 脚本/デヴィッド・ガイラー、ウォルター・ヒル、ラリー・ファーガソン
- 撮影/アレックス・トムソン
- 音楽/エリオット・ゴールデンサル
- 美術/ノーマン・レイノルズ
- SFX/リチャード・エドランド、ジョージ・ギブス
- シガニー・ウィーヴァー
- チャールズ・ダットン
- チャールズ・ダンス
- ポール・マクガン
- ブライアン・グローヴァー
- ランス・ヘンリクセン
- ラルフ・ブラウン
- ダニー・ウェッブ
- ジョン・フィールズ
- ホルト・マッカラニ
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