ハリウッドが長年鍛え上げてきた経済的説話法による、最高到達点
2008年にイギリス最大の映画雑誌エンパイアが、「The 500 Greatest Movies of All Time」(歴代最高の映画ランキング500)を発表。『ゴッドファーザー』(1972年)やスピルバーグ&ルーカス作品が当然のごとく上位ランクインされるなか、第4位に輝いたのは『ショーシャンクの空に』だった。
- 『ゴッドファーザー』(1972年/フランシス・フォード・コッポラ)
- 『レイダース/失われたアーク《聖櫃》』(1981年/スティーヴン・スピルバーグ)
- スター・ウォーズ/帝国の逆襲(1980年/アービン・カーシュナー)
- ショーシャンクの空に(1994年/フランク・ダラボン)
- 『ジョーズ』(1975年/スティーヴン・スピルバーグ)
『ショーシャンクの空に』は、ハリウッドが長年鍛え上げてきた経済的説話法による、一つの見事な到達点だと思う。
原作は、スティーヴン・キングの中篇作品集『恐怖の四季』のひとつ、『刑務所のリタ・ヘイワース』。この叙情的な物語を、『ヘルナイト』の製作アシスタントとして映画業界デビューを果たし、己のスキルを研鑽してきたフランク・ダラボンが、本作が初監督作品とは思えないほどに老練な手管で映像化している。
物語が臨界点に達すると、ここぞとばかりにクレーン撮影(または空撮)で映像にダイナミズムを付与し、役者の繊細な演技は、的確にクローズアップで捉える。
143分という長尺な物語を緩急の効いた語り口で転がし、観客の喜怒哀楽を巧みに操作。この作品には、鉄板の安定度を誇る演出が張り巡らされている。第67回アカデミー賞において7部門にノミネートされたのもナットク、である。
かといって、この映画が完全無欠の作品かといえば、疑問の余地が残る。物静かな振る舞いのなかに、どこか青ざめた狂気が垣間見えてしまうティム・ロビンスは、正直この役にはフィットしていないような気がするし(ティム・ロビンスは身長195センチの巨漢だが、スティーヴン・キングの原作では小柄な男とさられている)、一目見たら忘れられないような強烈なショットも提示できていないし、トーマス・ニューマンによるスコアも印象的なメロディーを奏でてはいない。
『ショーシャンクの空に』は、どー考えても映画史を塗り替える作品ではないんだが、とにかく全てにおいてアベレージが高い。
シネフィル的にあーだこーだと難癖をつけようとしても、全体の骨格が揺るぎない安定度を誇っていて、なまじっかなスノビッシュ野郎(まあ僕のことですが)の手にかかってもビクともしないんである。
無実の罪で19年間ショーシャンク刑務所に服役させられた男が、天才的知謀を発揮して脱獄し、自由への査証を得るまでの物語。
「決して希望を捨てないこと」という、ちょっと体がムズ痒くなるような陳腐極まりないメッセージすら、正攻法に正攻法を重ねた演出で、最終的に納得させられてしまう。
個人的には、「無人島に持って行くお気に入りの一本」に『ショーシャンクの空に』を挙げることはしないけれども、何度でも鑑賞に耐えられる完成度の高い一本である!と断言することには躊躇いたしません。
- 原題/The Shawshank Redemption
- 製作年/1994年
- 製作国/アメリカ
- 上映時間/143分
- 監督/フランク・ダラボン
- 製作/ニキ・マーヴィン
- 製作総指揮/リズ・グロッツアー、デイヴィッド・レスター
- 原作/スティーヴン・キング
- 脚本/フランク・ダラボン
- 撮影/ロジャー・ディキンス
- 音楽/トーマス・ニューマン
- 美術/テレンス・マーシュ
- 編集/リチャード・フランシス・ブルース
- ティム・ロビンス
- モーガン・フリーマン
- ウィリアム・サドラー
- ボブ・ガントン
- ジェームズ・ホイットモア
- クランシー・ブラウン
- ギル・ベロウズ
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