お互い胸襟を開き、酒の一杯でも酌み交わすことか?否。同じ夢に向かって切磋琢磨し、夕日に向かってジャンプすることか?否。何よりもまず必要なこと、それは拳と拳がぶつかり合うエクスタシー、つまり殴り合いである!
肉体が憔悴しきるまで相手の腹にパンチを浴びせ続け、同じように相手のパンチを己の肉体で受け止めることである!その先には必ず、エアーズ・ロックのごとく固い絆が結ばれていることであろう。
ソウルメイトをお探しの皆さんは、今すぐ街に繰り出して、誰それ構わずストリートファイトを仕掛けることをオススメする。
1930年代のマルセイユを舞台に、ジャン・ポール・ベルモンドとアラン・ドロンの二大スターが競演するギャング映画『ボルサリーノ』(1970年)でも、二人はオンナをめぐって大立ち回りを演じるものの、数分後には晴れやかな笑顔で握手をし、数時間後には二人してディナーに舌鼓を打っていたりする。
ケチなチンピラ二人が暗黒街で立身出世するこの物語において、何よりも称揚されるのは二人の友情がいかに鉄壁なものであるかどうかだ。
それなりの人数のそれなりのオンナたちが登場するにも関わらず、この『ボルサリーノ』はビックリすぐらいに女優たちがドラマに関与してこない。
ちょっと可愛い女の子が出てきたかなーと思うと、彼女は街を牛耳るボスの愛人で、ジャン・ポール・ベルモンドと一緒にボート遊びしただけでボスの怒りを買い、しまいには殺されてしまう始末だ(ヒドすぎる…)。男前二人による男前ムービーを成立させるには、ブロンド美人なんぞ邪魔でしかない。
成功の象徴としての帽子“ボルサリーノ”をかぶったベルモンド&ドロンの華麗なファッションや、陽気なラグタイム・ ピアノに代表される垢抜けた音楽センスなど、全体の雰囲気はフランス版『明日に向かって撃て!』という趣きだが、ヒロイン不在で成立してしまっているのが『ボルサリーノ』の特殊性である。
ラストで兇弾に倒れたベルモンドをしっかりと抱きしめるアラン・ドロンの姿には、友情を超えたブロマンス的関係をも想像してしまうのだが。
- 原題/Borsalino
- 製作年/1970年
- 製作国/フランス
- 上映時間/125分
- 監督/ジャック・ドレー
- 製作/アラン・ドロン
- 原作/ユージェーヌ・サコマノ
- 脚本/ジャン・クロード・カリエール、クロード・ソーテ、ジャック・ドレー、ジャン・コー
- 撮影/ジャン・ジャック・タルベス
- 音楽/クロード・ボラン
- 編集/ポール・カイヤット
- 衣装/ジャック・フォントレー
- ジャン・ポール・ベルモンド
- アラン・ドロン
- ミシェル・ブーケ
- カトリーヌ・ルーヴェル
- フランソワーズ・クリストフ
- コリンヌ・マルシャン
- ニコール・カルファン
- ジュリアン・ギオマール
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