有人火星探査中継のねつ造疑惑を描く、ポリティカル・サスペンス
ピーター・ハイアムズといえば、デビュー以来徹底している「シネマスコープサイズの横長画面サイズ」を駆使して、巨悪に立ち向かう男気映画を発表し続けてきた男気作家である。
宇宙ステーションで、ショーン・コネリーが単身採掘会社に立ち向かう『アウトランド』(1981年)しかり、アーノルド・シュワルツェネッガーが悪魔と対決する『エンド・オブ・デイズ』(1999年)しかり。
人類初の有人火星探査中継が、実はスタジオで撮影されたニセモノだったという、未曾有のねつ造計画を描いた『カプリコン・1』(1977年)は、まさに彼の持ち味が十二分に発揮された代表作のひとつ。
アポロ11号による人類初の月面着陸から8年後に、この映画が公開された訳だが、実はその頃から月面着陸はフェイクだったのではないか?という噂はまことしやかに囁かれてきた。
「真空の月面で星条旗が揺れているのはオカシイ」とか、「着陸船の影と岩の影の方向が違うのはオカシイ」とか、その真偽を問う声は今でも後を絶たない。
最初はNASA(アメリカ航空宇宙局) が『カプリコン・1』の製作に協力的だったものの、内容を知ってから手の平を返したかのように協力拒否した、という有名な話があるが、そりゃそーだろ。
アメリカがその威信を守るために世界を騙し、その秘密に触れようとした者は次々と消されていくという展開は、SF映画というよりもポリティカル・サスペンス、いわゆる国家陰謀モノとしての面白さに満ちている。
陰謀の真相に少しずつ近づいていく新聞記者(エリオット・グールド)と、政府の手から逃れようと脱出を試みる三人の宇宙飛行士(そのうちの一人は、あのO・J・シンプソン!)を同時並行で語りつつ、じわじわとサスペンスフルな緊張感を高揚させていく手管はさすがピーター・ハイアムズ。
最後になって突然、豪快なエアプレーン・アクションへなだれ込む展開には正直驚いたが、これも娯楽映画としての落とし前の付け方というべきか。
政府側のヘリコプターと、農薬散布用の複葉機とのチェイスシーンが存在することによって、結果的にこの映画には、荒唐無稽さが強調されている。つまり、ノンフィクションとしての意味合いが強くなる。
それはひょっとしたら、「人類初の月面着陸がフェイクだったというのは、あくまで映画上でのプロットに過ぎないんですよー」という、アメリカ政府への精一杯の”ご機嫌取り”だったのかもしれない。
- 原題/Capricorn One
- 製作年/1977年
- 製作国/アメリカ
- 上映時間/123分
- 監督/ピーター・ハイアムズ
- 製作/ポール・N・ラザルス3世
- 脚本/ピーター・ハイアムズ
- 撮影/ビル・バトラー
- 音楽/ジェリー・ゴールドスミス
- 編集/ジェームス・ミッチェル
- 衣装/パトリシア・ノリス
- エリオット・グールド
- ジェームズ・ブローリン
- ブレンダ・ヴァッカロ
- サム・ウォーターストン
- O・J・シンプソン
- ハル・ホルブルック
- テリー・サヴァラス
- カレン・ブラック
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