政治サスペンスと人間ドラマがクロスオーバーする、ゴッタ煮映画
【思いっきりネタをばらしているので、未見の方はご注意ください。】
プリンストン大学院の数学科に入学したジョン・ナッシュは、周囲から変人扱いされながらも、「ゲーム理論」なる画期的法則を発見する。その功績が認められてMITのウィーラー研究所に就職し、美しいガールフレンドのアリシアとも結婚。
やがて、彼の頭脳に目をつけた諜報部が、敵国・ソ連の暗号解読を依頼する。スパイとして秘密任務に心血を注ぐナッシュだったが、実は全ては統合失調症の彼が創りだした幻想だった…。
これはなかなかに欲張りな映画である。、『レインマン』(1988年)、『グッド・ウィル・ハンティング/旅立ち』(1997年)系の「孤独な天才を描く作品」かと思いきや、一転してトーンが政治色の強いサスペンスに。
後半は、さらに打って変わって、感動的な人間ドラマにスイッチングしているのだ。ジャンルのゴッタ煮状態とでも言おうか、闇鍋状態とでも言おうか。
もちろん『ユージュアル・サスペクツ』(1995年)、『ファイト・クラブ』(1999年)、『アンブレイカブル』(2000年)など、過去にドンデン返しモノは数多く製作されている訳だが、あくまでそれはサスペンスを増幅させる手段。
政治スリラーかと思って身を乗り出していると、突然アリシア(ジェニファー・コネリー)の献身的愛情にドラマが激変するものだから、エモーション・チェンジするのにそうとう苦労する。
こんなヘンテコな構造の作品が、アカデミー作品賞、監督賞、助演女優賞、脚色賞を受賞してしまうんだから、アメリカって許容度があるというか、懐が深いというか…。原作ではジョン・ナッシュが研究所で同性愛に走る描写があるのだが、さすがにそこは「ストーリーが渋滞してしまう」判断からか、潔くオミットしている。
とはいえ、異なる位相のジャンルをクロスオーバーしている作品であることは間違いない。個人的には青春映画と思いきや最後になってSF映画に変貌する『オープン・ユア・アイズ』(1997年)に近い感覚を覚えましたです。
もともとラッセル・クロウは好きでな俳優ではないのだが、明らかにこの映画では演技プランを間違えていると思う。傲慢不遜な地のキャラクターが滲み出てしまっていて、「コミュニケーション不全の、ピュアな天才数学者」という設定にムリがありすぎ。
っていうか、ビューティフル・マインドを有する人物には全く見えんわ!!
- 原題/A Beautiful Mind
- 製作年/2001年
- 製作国/アメリカ
- 上映時間/135分
- 監督/ロン・ハワード
- 製作/ブライアン・グレイザー、ロン・ハワード
- 製作総指揮/トッド・ハロウェル、カレン・ケーラ
- 原作/シルヴィア・ネイサー
- 脚本/アキヴァ・ゴールズマン
- 撮影/ロジャー・ディーキンス
- 音楽/ジェームズ・ホーナー
- ラッセル・クロウ
- エド・ハリス
- ジェニファー・コネリー
- クリストファー・プラマー
- ポール・ベタニー
- アダム・ゴールドバーグ
- ジョシュ・ルーカス
- ヴィヴィエン・カーダン
- アンソニー・ラップ
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