どこか垢抜けない、ノンビリしたタッチの犯罪映画
『恋人よ帰れ!わが胸に』(1966年)、『おかしな二人』(1968年)、『フロント・ページ』(1974年)、『ラブリー・オールドメン』(1993年)など、ジャック・レモンと組んだコメディ映画の印象が強いウォルター・マッソー。
実は、『シャレード』(1963年)や『サブウェイ・パニック』(1974年)など、サスペンス映画への出演も少なくない。『突破口!』(1973年)では、B級アクション映画の巨匠ドン・シーゲルと組んで、知謀に長けた銀行強盗役を貫禄たっぷりに演じている。
平和でのどかなニュー・メキシコの田舎町の風景を映し出す牧歌的なオープニング・クレジットから、突如として銀行を舞台に銃撃戦が始まるという緩急の付け方は、いかにもドン・シーゲル的。
銀行からふんだくった75万ドルが実はマフィアの隠し金で、ウォルター・マッソー率いる銀行強盗一味がマフィアに執拗に追いかけられることになる、という巻き込まれ型の展開もお得意なパターンだ。
よく考えてみると、このストーリーラインってコーエン兄弟の『ノーカントリー』(2007年)と激似。しかし、一切のユーモアを排し、鋭利なカミソリのごとくソリッドで冷徹な語り口を貫いた『ノーカントリー』と比べて、抑制的でシャープな切れ味は有しているものの、『突破口!』は西部のどこか垢抜けない、ノンビリしたタッチで描かれている。
そもそも、彼を付けねらう殺し屋役のジョー・ドン・ベイカーが、でっぷりとした体格に赤ちゃんのような童顔なもんだから、観客に深刻なドラマを想起させないのである。
そりゃまあ、『ノーカントリー』で超鬼畜アサシンキャラを演じたハビエル・バルデムと比べてしまえば、大概の殺し屋は甘口に見えるだろうが…。
むしろこの映画で一番の狂気を放っているのは、銀行強盗一味を演じたアンディ・ロビンソンだろう。ドン・シーゲルの代表作『ダーティハリー』(1971年)で悪役スコーピオンを演じたアノ人である。とにかくあらゆる表情が尋常ではない。
彼の瞳にはナチュラル・ボーン・サイコな光がらんらんと輝いている。銀行強盗とマフィアの知謀戦を描いた『突破口!』の中にあって、彼が惨殺されているカットは、映画のトーンを変質させるほどに異様な迫力に満ちているではないか!
これもまた、いかにもドン・シーゲル的なのであるが。
- 監督/ドン・シーゲル
- 脚本/ハワード・ロッドマン、ディーン・リーズナー
- 製作/ドン・シーゲル
- 制作会社/ユニバーサル・ピクチャーズ
- 原作/ジョン・リーズ
- 撮影/マイケル・C・バトラー
- 音楽/ラロ・シフリン
- 編集/フランク・モリス
- 美術/フェルナンド・カレレ
- 衣装/ヘレン・コルヴィッグ
- ボディ・スナッチャー/恐怖の街(1956年/アメリカ)
- 真昼の死闘(1970年/アメリカ、メキシコ)
- 突破口!(1973年/アメリカ)
- アルカトラズからの脱出(1979年/アメリカ)
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