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『レモ 第一の挑戦』(1985)なぜ“第二の挑戦”に至らなかったのか?

『レモ 第一の挑戦』(1985)
映画考察・解説・レビュー

4 OKAY

『レモ 第一の挑戦』(原題:Remo Williams: The Adventure Begins/1985年)は、ウォレン・マーフィ&リチャード・サピア原作の小説『デストロイヤー』を映画化したアクション作品。強迫的な正義感を持つ警官が、謎の組織により新たな暗殺者レモとして生まれ変わり、超人的な武術“シナンジュ”の修行を通して数々の任務に挑む。ニューヨークを舞台に、孤独な男が再生を試みるB級アクションの真骨頂である。

消えた「第二の挑戦」──タイトルが示す未完の約束

第一の挑戦から40年。続編の報はいまだに届かない。タイトルに「第一の」と大見得を切っておきながら、見事なまでに一歩目でズッコケた孤高の作品、それが『レモ 第一の挑戦』(1985年)である。

これほどまでに、「おい、ブラザー!次があるから見ておけよ!」という製作陣の傲慢な自信と、興行成績という無慈悲な現実のギャップが激しい映画も珍しい。

原作は全62巻という狂気のボリュームを誇る人気小説『デストロイヤー』シリーズ。本来なら『007』や『ランボー』に並ぶ巨大フランチャイズになるはずだった。

しかし、蓋を開けてみればどうだ。80年代アクション黄金期のキラキラした喧騒から完全に取り残され、歴史の地層に深く沈み込んだ「未完の序章」になってしまっている。だが、その「失敗」の香ばしさこそが、現代の映画ファンを惹きつける、B級の魔力といえるかもしれない。

オープニングからして凄まじい。フォトジェニックのかけらもないニューヨークの薄汚い夜景に、時代遅れのロックナンバー。主人公のフレッド・ウォードが「俺の顔も整形したのか!」と詰め寄るが、どう見ても髭を剃ってサッパリしただけ。

この「整形と言い張れば整形になる」という力技の脚本こそ、80年代ハリウッドが持っていた恐るべき鈍感さと勢いの象徴である。

シナンジュという名の、ハリウッド流・捏造アジア文化の極致

本作を語る上で絶対に避けて通れないのが、謎の暗殺武術「シナンジュ」の達人、チウンの存在だ。血気盛んな若者が東洋の師匠に弟子入りする構図は、一見すると前年に大ヒットした『ベスト・キッド』の二番煎じだが、その中身の狂気度は比較にならない。

まず、師匠チウンを演じているのは、あろうことか英国人俳優ジョエル・グレイ。映画『キャバレー』でオスカーを手にした超一流の演技派に、毎日数時間をかけた特殊メイクで「無理やり東洋人の皮」を被せるという、今ならSNSが即座に大炎上し、スタジオごと灰になるレベルの文化的暴挙だ。

なぜ、本物のアジア人俳優を使わなかったのか?製作陣は「卓越した演技力を持つ老人」を求めた結果、メイクで化けさせる道を選んだという。この「本物のアジア人よりも、メイクをした白人の方が価値がある」というハリウッドの傲慢なホワイト・ウォッシングこそ、80年代の無自覚な暴力性の極み。

しかも設定がまた凄まじい。「空手?あれは日本の洗濯女が使う技だ」と言い放ち、シナンジュこそがすべての武術の始祖だと断言する。アジア各国の文化を一まとめにして勝手に格付けする乱暴なオリエンタリズム!

だが、このインチキな嘘を真実として突き通そうとする不器用な執念こそが、観客を困惑と爆笑の渦に叩き込むパワーの源泉なのだ。

「重力」に挑んだB級職人たちの意地

監督を務めたのは、『007/ゴールドフィンガー』を撮った巨匠ガイ・ハミルトン。普通なら、スピーディーでスマートなアクションを期待するだろう。

ところがこの映画、驚くほど「動かない」。銃弾を避けるのも、格闘するのも、すべてがワンテンポ遅い。ハミルトンは、007的な軽快さに飽き果てて、あえてこの「停滞」を撮ったのではないかと疑いたくなるほどだ。

しかし、この遅さこそが本作の真価。筋肉自慢の映画が量産された80年代において、この映画は「重力」と戦っていた。

自由の女神像の足場でのガチな高所スタント、高層ビルでの訓練。CGに頼れない時代、本物の「高さ」に賭けた製作陣の執念だけは本物。脚本はガタガタ、演出は古臭い。だが、あの垂直的なスリルだけは、どんな超大作にも負けない「本気のバカ」の輝きを放っている。

完璧な作品ではない。だが、完璧ではないことの美しさを信じていた映画である。ハリウッドがまだ「バカ映画」を誇りを持って作っていた時代の残照、それが『レモ 第一の挑戦』なのだ。

おそらく第二の挑戦は永遠に訪れない。だが、その一歩目のズッコケ方があまりに豪快だったからこそ、この映画はB級の皮をかぶった「時代の証人」として、我々の記憶に居座り続けるのである!

個人的な本音を言えば、「水の上を走る」練習シーンで、明らかに水面下に板が敷いてあるのがバレバレなあたり、「神話が崩壊する瞬間のマヌケさ」が凝縮されていて、何度見ても最高の気分になれる。

DATA
  • 原題/Remo Williams: The Adventure Begins
  • 製作年/1985年
  • 製作国/アメリカ
  • 上映時間/121分
  • ジャンル/アクション
STAFF
  • 監督/ガイ・ハミルトン
  • 脚本/クリストファー・ウッド
  • 製作/ラリー・スピーゲル
  • 製作総指揮/ディック・クラーク、メル・バーグマン
  • 原作/リチャード・セピア、ウォーレン・マーフィ
  • 撮影/アンドリュー・ラズロ
  • 音楽/クレイグ・セイファン
CAST
  • フレッド・ウォード
  • ジョエル・グレイ
  • ウィルフォード・ブリムリー
  • ケイト・マルグルー
  • J・A・プレストン
  • チャールズ・シオッフィ
  • ジョージ・コー
  • パトリック・キルパトリック
  • マイケル・パタキ
  • コジー・コスタ
  • ダヴェニア・マクファデン
  • ジョン・ポリト
FILMOGRAPHY