大八木淳史似フレッド・ウォードが大暴れ!’80s牧歌的アクション映画
第一の挑戦から数十年経った今も、とんと第二の挑戦の噂をきかない『レモ 第一の挑戦』(1985年)。
原作となったウォレン・マーフィ&リチャード・サピアによるアクション小説『デストロイヤー』は、全部で62巻を数える超人気シリーズらしく、トーゼン製作側も続編を見込んでこんなタイトルにしてしまったんだろうが、かえすがえすもザンネンであります。
オープニング・クレジットから、ニューヨークの夜景(これが全然フォトジェニックじゃない!)+最新ロックナンバーという、’80年代丸出しなチープ感が漂う。
ムサ苦しい髭モジャ警官が登場するやいなや、謎の超法規的組織の手によって偽装死させられ、「今日からお前はレモと名乗り、法で裁けない悪者をやっつけろ!」と、我が耳を疑うミッションを突きつけられる。
笑えるのは、レモが「顔も整形させられたのか!」とフンガイするシーンがあるんだが、どう考えても髭を剃っただけにしか見えないこと。その主役を演じるフレッド・ウォードのルックスが、微妙に元ラグビー選手の大八木淳史に似ているのも見逃せない。
かくして物語は、暗殺者レモが次々とターゲットを始末していく『ゴルゴ13』的展開になるのかと思いきや、あらゆる格闘技の祖であるシナンジュ(もちろん、こんな武術は現実には存在しない)を極めたという、謎の韓国人チウンとのマンツーマン特訓シーンが繰り広げられる。
血気盛んな若造と、東洋的バックグラウンドをもったメンター(師匠)という構図は、明らかに『ベストキッド』におけるダニエル&ミヤギを連想させる。
このチウン役を、なぜかイギリス人俳優のジョエル・グレイが厚塗りメイクで演じているのだが、『キャバレー』(1972年)でアカデミー助演男優賞を獲得した演技力をもってしても、胡散臭さは隠しようがなく(っていうか増幅されている)、チープ感がよりスパークしている。
鈍重かつモッサりしたお話の展開、おまけに主人公は大八木淳史似。監督のガイ・ハミルトンは『007』シリーズを手がけたベテランだが、その反動でアンチ二枚目のアンチ・スピーディーな映画を撮ったのか?
とまあ、これで終わってしまったら単につまらないB級アクション映画だが、製作陣の並々ならぬ「高所に対する徹底した執着」によって、『レモ 第一の挑戦』は意外にも緊張感のある作品。
高層ビルの屋上での特訓&自由の女神像でのバトルと、命を張った高所スタントは眼を見張る。CGのなかった時代にあって、この本気度は買い!
海外ドラマ『コンバット!』(1962年〜)系の景気のいいマーチ風テーマ音楽がひっきりなしにかかってたり、敵のぶっ放した弾丸を体をのけぞらせて回避しちゃったり、牧歌的なおおらかさが全編を覆っているのも魅力。
’80年代の珍品映画として片付けるには惜しいだけに、いつの日にか『第二の挑戦』を製作していただきたいものだ。観に行くかどうかはビミョーですが。
- 原題/Remo Williams: The Adventure Begins
- 製作年/1985年
- 製作国/アメリカ
- 上映時間/121分
- 監督/ガイ・ハミルトン
- 製作/ラリー・スピーゲル
- 製作総指揮/ディック・クラーク、メル・バーグマン
- 原作/リチャード・セピア、ウォーレン・マーフィ
- 脚本/クリストファー・ウッド
- 撮影/アンドリュー・ラズロ
- 音楽/クレイグ・セイファン
- フレッド・ウォード
- ジョエル・グレイ
- ウィルフォード・ブリムリー
- ケイト・マルグルー
- J・A・プレストン
- チャールズ・シオッフィ
- ジョージ・コー
- パトリック・キルパトリック
- マイケル・パタキ
- コジー・コスタ
- ダヴェニア・マクファデン
- ジョン・ポリト
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