全編ウソ臭いハッタリズムで突き通した、ヒーロー映画の異色作
『悪魔のはらわた』シリーズで、スプラッターの巨匠となったサム・ライミが、全編ウソ臭いハッタリズムで撮りあげてしまった怪作。
主演は後年『シンドラーのリスト』(1993年)でブレイクしたリーアム・ニーソン。『スター・ウォーズ エピソード1 ファントム・メナス』では主演を務めた大スターである彼が、昔はこんなバカ映画に出ていたと思うと感慨深い。
んで、ダークマンとは結局何者かといえば、人口皮膚で自らを覆い隠す「怪人二十面相」みたいなもんである。
どんな顔にも自在に変身できるが、その効果が一時間ちょっとしか続かないというのがミソ。タイムリミットが迫ると顔から湯気がシューシューでたりして、このチープさがこの映画の魅力です。
登場人物が驚いた表情を浮かべればカメラは急激に寄ってくるし、緊張感を煽る時には照明は真上から当てられる。
緊迫した場面では被写体は斜めから切り取られ、ショッキングなBGMがかぶさる。サム・ライミがこの映画で挑戦したのは、’40~’50年代の古典的なテクニックであり、ひたすら仰々しい演出である。
全編に漂うオバカチックなテイストは、確信犯的手つき。なんといっても圧巻は、遊園地のシーンだろう。的当てゲームでピンクの象さんをゲットしたのに、店のオッサンに「線をはみ出したからダメ」と言われると、ワナワナと怒りにふるえるシーンなんぞ、小生は正気で観られない。
スプラッター出身のサム・ライミだけに、ところどころでグロなシーンもあることはあるが、よほど心臓の弱い老人でない限り大丈夫。オバハンやガキどもにも観賞できるように、実に甘口に設定されている。
個人的に一番恐いのは、リーアム・ニーソンの恋人役を演じたフランシス・マクドーマンドの顔だと思うんだが。ってうか、彼女を特撮ヒーローモノのヒロインに据えるという発想そのものがスゴい。
ところで映画のラストでさりげなく出演しているのは、『死霊のはらわた』シリーズで有名なブルース・キャンベルである。あのクドすぎる顔は、マニアなら見逃さないであろう。
最近はどこで何やってんだか、ブルース・キャンベル。
- 原題/Darkman
- 製作年/1990年
- 製作国/アメリカ
- 上映時間/96分
- 監督/サム・ライミ
- 原案/サム・ライミ
- 製作/ロバート・タパート
- 脚本/サム・ライミ、チャック・ファーラー、アイヴァン・ライミ、ダニエル・ゴールディン、ジョシュア・ゴールディン
- 撮影/ビル・ポープ
- 音楽/ダニー・エルフマン
- 美術/ランディ・セル
- 衣装/グラニア・プレストン
- リーアム・ニーソン
- フランシス・マクドーマンド
- ラリー・ドレイク
- コリン・フレールズ
- セオドア・ライミ
- ニール・マクドノー
- ブルース・キャンベル
最近のコメント