映画評論家の町山智浩氏が、『戦慄! 昆虫パニック』、『尼僧ヨアンナ』、『裸のジャングル』などなど、心に爪あとを残した映画を書き綴った『トラウマ映画館』なるナイスなエッセイ集を著しているが、僕個人のトラウマ映画といえば『グレート・ウォリアーズ/欲望の剣』にトドメを刺す。
日本では劇場未公開のビデオスルー作品で、当時は『炎のグレートコマンド/地獄城の大冒険』というB級丸出しのタイトルであった。
淀川長治が現役バリバリの頃に『日曜洋画劇場』で放送されていたのを観たのだが、今思えばこんなエログロ満載な映画を、いけしゃあしゃあとサンデーナイトに放送していたのって、今では到底考えられない暴挙なり。
初っ端から阿鼻叫喚の戦闘&略奪シーンだし、王女様をよってたかって輪姦しちゃうし、登場人物は全員モラルのカケラもないファック野郎だし。テレ朝、倫理規定のユルさがナイス!
舞台は、暗黒時代真っ只中の中世ヨーロッパ。マーティン(ルトガー・ハウアー)率いる傭兵部隊は、「戦に勝てば、城内のものは戦利品として、根こそぎ持っていってOK!」という雇い主のアーノルフィニ( フェルナンド・ヒルベック)の言葉を信じ、攻城戦に勝利して殺人・略奪・乱暴の限りを尽くす。
しかし舌の根の乾かぬうちにアーノルフィニは無報酬で彼らを部隊から追放。怒りに燃えたマーティン一行はその息子スティーヴン(トム・バーリンソン)を襲撃、許嫁のアグネス(ジェニファー・ジェイソン・リー)を誘拐してレイプする(ヒド過ぎる!!)。
その後古城に乗り込んで城主を惨殺、飲めや歌えやの宴会モードのマーティンに、スティーヴンが復讐を企てる…という、鬼畜全開なストーリーだ。
全編に渡って悪趣味の極み、最もロマンチックなシーンも首吊り死体のたもとでのキスシーンという、絶対自分の子供には見せたなくない映画がこの『グレート・ウォリアーズ/欲望の剣』であるが、ポール・バーホーベンの「これが人間の本質だろ?」という露悪的演出がメガトン級の破壊力。
リーダーと崇めていたはずのマーティンを仲間がよってたかって罵倒し、ペスト菌がウヨウヨしている井戸に突き落とすシーンなんぞ、「友情ってナニ?仲間ってナニ?」と脳天がフラフラしてしまった覚えがある。
しかし僕がこの映画で最もトラウマとなったのは、ジェニファー・ジェイソン・リー演じるアグネス。マーティンにさらわれて処女を奪われる悲劇のヒロインと思いきや、マーティンに恋心をチラ見せしつつ、スティーヴンにも偽りのない愛情を吐露するという、八方美人な魔性のカマトト女。
この悪女ぶりに当時真性童貞ボーイだった小生は、正邪併せ持つオンナの二面性に仰天し、軽く女性トラウマになった記憶あり(その症状は今も続いている!!)。
ジェニファー・ジェイソン・リーという女優が放つ、こまっしゃくれたネコ科の身のこなしと、突き刺さるような視線にもヤラれてしまった。
もともと彼女は『初体験/リッジモント・ハイ』や『ルームメイト 』など、おっぱい要員として八面六臂の活躍だったが、この映画でもアンダーヘアさえ厭わない脱ぎっぷり。
全体的にボテッとした幼女体型なれど、真性童貞ボーイの僕に強烈なエロティシズムを植え付けたんである。
セックス&バイオレンスに塗りたくられ、バーホーベンが偏愛する暗黒系画家ヒエロニムス・ボス的な地獄絵図が全面展開。アンチ・クライシストな冒涜的内容に、一部の良識ある知識人からは猛烈な抗議があったという(当然だろう)。
しかしながらこの映画は、オランダのアカデミー賞に当たる「黄金の子羊賞」作品賞&監督賞を受賞。
バーホーベンは一気に国際的名声を得て、この後『ロボコップ』、『氷の微笑』、『ショーガール』といった、サイコーに面白いけどサイテーに下劣な作品群をハリウッドで産み出すことになる。
- 原題/Flesh + Blood
- 製作年/1985年
- 製作国/アメリカ、オランダ、スペイン
- 上映時間/126分
- 監督/ポール・ヴァーホーヴェン
- 製作/ギス・ヴァースライズ
- 原案/ジェラード・ソェットマン
- 脚本/ポール・ヴァーホーヴェン、ジェラード・ソェットマン
- 撮影/ヤン・デ・ボン
- 音楽/ベイジル・ポールドゥリス
- ルトガー・ハウアー
- ジェニファー・ジェイソン・リー
- トム・バーリンソン
- ジャック・トンプソン
- フェルナンド・ヒルベック
- スーザン・ティレル
- ロナルド・レイシー
- ブライオン・ジェームズ
- ジョン・デニス・ジョンストン
- サイモン・アンドリュー
- ブルーノ・カービイ
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