炭鉱の人々とフラガールという対立構造が次第に同一化していく物語
かつて隆盛を誇った常磐炭礦の採炭事業が、斜陽を迎えた昭和40年。地域の再活性化をはかるため、会社はレジャー産業進出を決断。
東京からダンス教師を招いて炭鉱娘にフラダンスを教育し、北国にハワイアンセンターを設立する…という実話の映画化が、この『フラガール』(2006年)である。
この常磐ハワイアンセンター(現在はスパリゾートハワイアンズに改称)の人気は凄まじく、年間150万人を超える賑わいをみせ、炭鉱時代の借金を10年で返済したという。
何百億というお金を注ぎ込んだ結果、「税金の無駄遣い」と言われてしまうような施設ばかり作り続けている一部行政は、このハワイアンセンターから教えを乞うたらいかがか。
結局『フラガール』は観客動員120万人、興収15億円という大ヒットを飛ばし、キネマ旬報ベストテン邦画第1位、日本アカデミー賞最優秀作品賞、ブルーリボン賞作品賞などあらゆる映画賞を総ナメ。
2007年を代表する邦画にとなった。確かにドラマとしての強度は高い。昭和ノスタルジー、少女たちのサクセスストーリー、そして今をときめく天才女優・蒼井優と、当たる要素は詰まりに詰まっている。アベレージの高い作品であることは間違いない。
炭鉱の人々とフラガールという対立構造が次第に同一化していく、そのプロセスこそが本作のドラマとしての根幹。
すすけた炭鉱の街の撮影に、粒子が荒くダークな質感を生み出す「銀残し」(市川崑監督が好んで使った手法)という撮影技術を用いることによって、華やかなフラガールの世界との対比が映像的に補完され、松雪泰子ー炭鉱の人々、蒼井優ー富司純子といった対立構造が鮮やかに浮かび上がる。このあたりの映像処理は確かにうまい。
ラスト30分は「思う存分泣いてクダサレ」とばかりに、涙腺を刺激するエピソードの怒濤ラッシュ(ちょっとクドいけど)。個人的に一番泣けたのは、富司純子が「ストーブ貸してやってくんちゃ~い」と哀願するシーンである。
そもそも、富司純子と蒼井優が親娘という設定なのがスゴイ。その年齢差、40歳である。まあ、豊川悦司と蒼井優が兄妹という設定なのもすごいですが(年齢差26歳)。
- 製作年/2006年
- 製作国/日本
- 上映時間/120分
- 監督/李相日
- 脚本/李相日、羽原大介
- 製作/李鳳宇、河合洋、細野義朗
- 企画/石原仁美
- 音楽/ジェイク・シマブクロ
- ラインプロデューサー/祷映
- 監督補/杉山泰一
- 撮影/山本英夫
- 美術/種田陽平
- 照明/小野晃
- 録音/白取貢
- 編集/今井剛
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- 松雪泰子
- 豊川悦司
- 蒼井優
- 山崎静代
- 池津祥子
- 徳永えり
- 三宅弘城
- 寺島進
- 高橋克実
- 岸部一徳
- 富司純子
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