ロマン・ポランスキー 初めての告白/ロラン・ブーズロー

ゴシップまみれロマン・ポランスキーの公開懺悔ショー

『反撥』(1964年)、『ローズマリーの赤ちゃん』(1968年)、『チャイナタウン』(1974年)など、数々の傑作を世に送り続けてきたロマン・ポランスキー。だが彼は、その典雅な名前とはかけ離れた、性的ゴシップまみれの映画作家でもある。

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『チャイナタウン』(ロマン・ポランスキー)

13歳の少女に強姦・アナルセックスして逮捕されるわ、保護観察中にアメリカから国外逃亡するわ、その後も性懲りもなく当時15歳のナスターシャ・キンスキーとヤっちゃうわと、倫理的にはサイテーの極み。その一方で、幼少期に強制収容所で母親を失い、カルト教団に妻のシャロン・テートをはらわたを引っ裂かれて殺害されるという、凄惨な悲劇も体験している。

彼の人生には、夥しいほどの“性と死”が渦巻いている。“性”は「ロリコン親父のワイセツ罪加害者」としてのイメージであり、その“死”は「ナチスドイツとカルト教団に愛する者を奪われた被害者」としてのイメージ。加害者と被害者というアンビバレントな二重性は、そのままロマン・ポランスキーという映画作家の重層性に折り重ねることができるだろう。

この『ロマン・ポランスキー 初めての告白』(2013年)は、チューリッヒ映画祭の生涯功労賞授与式に出席しようとスイスに入国したとたん、前述の少女わいせつ事件の容疑でスイス当局に身柄を拘束され、軟禁されてしまったポランスキーにインタビューを行うという、前代未聞のドキュメンタリー。

今年80歳を迎える巨匠に、過去のフィルモグラフィーを回想してもらうだけでなく、“性と死”にまみれたゴシップ人生にも斬り込もうとする、なかなかスキャンダラスな内容なのだ。

そんなヤバすぎるドキュメンタリー映画のインタビュアーを務めるのは、ポランスキーのビジネスパートナーとして公私共に親交のあるアンドリュー・ブラウンズバーグ氏。

ポランスキーが監督した『マクベス』(1971年)のプロデューサーに名前を列ねているほか、『悪魔のはらわた』(1973年)や『処女の生血』(1974年)といったイタリアン・ホラーも製作している人物だ(“処女”とか“はらわた”とか、ポランスキーに思いっきりリンクしたタイトルが並んでいるのが興味深し!)。

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『悪魔のはらわた』(ポール・モリセイ)

だがこのブラウンズバーグ氏、友人だからこそスキャンダラスな事件にも臆せず糾問するというよりも、軟禁状態の友人に慮った大甘な質問内容で(そりゃそうだろう)、「あれは過ちだった」というありきたりな懺悔コメントを引き出すのみ。

『しゃべくり007』の人気コーナー『ギリギリ007』みたく、「あなたは真性ロリコンとして有名ですが、セックスした一番若い女の子の年齢はいくつですか?」ぐらいのギリギリ質問をしてくれたら、超面白くなったのにーー!

最後に被害者の少女が現在の姿で登場し、ポランスキーを非難するばかりか、「保護観察中にアメリカから国外逃亡したのは仕方のないこと」と彼を擁護するコメントをしたのには驚いた。結局のところ『ロマン・ポランスキー 初めての告白』は、今年で80歳を迎える巨匠の地位や名誉を傷つけることのないように配慮された、出来レース懺悔でしかない。

予定調和なインタビューほどつまらないものはない、と思うんですが。

DATA
  • 原題/Roman Polanski: A Film Memoir
  • 製作年/2013年
  • 製作国/イギリス・イタリア・ドイツ
  • 上映時間/90分
STAFF
  • 監督/ロラン・ブーズロー
  • 製作/アンドリュー・ブラウンズバーグ
CAST
  • ロマン・ポランスキー

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