M:i:III/J.J.エイブラムス

M:i:III [Blu-ray]

スパイ・アクションのお約束プロットをふんだんに詰め込んだ、サンプリング・ムービー

いよいよシリーズ第3弾だが、実は『M:i:III』の製作自体が、ミッション・インポッシブルなシチュエーションだったそうな。

もともとは、鬼才デヴィッド・フィンチャーがメガホンを取る予定だったが、打ち合わせの段階で巨大セットの建設やらVFXやらで予算が大幅に増加。

しかも「いまだかつてない撮影方法で、スケボー・シーンを作りたいんだ!」という、意味不明の気まぐれ発言に会社側がすっかり青ざめてしまい(っていうかどんな撮り方だ、それ?)、折り合いがつかず結局降板することに。

続いて監督候補に挙がったのが、クライム・サスペンスの傑作『NARC ナーク』(2002)で名を上げたジョー・カーナハン。

トム・クルーズは自らこの作品の製作総指揮を買って出るほど、彼の手腕を高く評価していたのだが、クランクイン間際になって「クリエイティブ面で食い違いがあるんで、ボク降ります!」と、ドタキャン。結局撮影も延期されてしまい、製作は暗礁に乗り上げてしまった。

そんなすったもんだのあげく、結局監督におさまったのがJ.J.エイブラムス。今でこそ、『スター・トレック』(2009)や、『スター・ウォーズ/フォースの覚醒』(2015)などを手がけた、ハリウッド屈指のフィルムメーカーと認知されているが、当時は「っていうか、お前誰やねん?」というツッコミが聞こえてきそうなほど、知名度は低かった。

もともとはテレビ畑で、『エイリアス』(2001〜2006)や、『LOST』(2004〜2010)とヒット作を連発。業界ではすでにその手腕は高く評価されていた。

『心の旅』(1991)や『フォーエヴァー・ヤング/時を越えた告白』(1992)など、映画の世界でも優れた脚本を執筆。僕の大っ嫌いな『アルマゲドン』(1998)も手がけていたりするのが懸念材料ではあったのだが、結論から言えば『M:i:III』はシリーズ屈指の娯楽大作として認知すべき力作に仕上がっている。

J.J.エイブラムスの狙いはおそらく、スパイ・アクションの徹底したサンプリング・ムービーだ。トム・クルーズが、恋人のミシェル・モナハンに「自分はIMFに所属しているスパイだ」ということを告白して、最後は仲間の喝采を浴びながら、ハネムーンに出かけてめでたくジ・エンド…なんて締めくくり方は、ほとんどパロディーネタとしてもベタすぎる展開。

「変装して敵と入れ替わる」だとか、「味方と思っていた人物が敵で、敵であると思っていた人物が味方だった」とか、「彼女を人質にとられて身動きが取れない」だとか、およそ考えられるだけの“お約束”が作品に散りばめられているんである。

何よりもまず、トム・クルーズが懸命になって捜し求める「ラビットフット」なるものが、結局最後までその正体が明かされることなく、極めて純粋な“マクガフィン”として機能していることに、我々は留意すべきだ。

マクガフィンとは何ぞや?それは、サー・アルフレッド・ヒッチコックによって考案されたとされる、作劇上の仕掛けである。劇中人物にとっては極めて重要で、それを巡って物語が展開されていく「何か」である。

しかし、それが「何か」であることは観客に明かされることはなく(明かす必要がないといったほうが適切か)、あくまでドラマを牽引するための装置として存在するんである。

冷静に考えると、この「ラビットフット」の正体が分からないと武器商人役のフィリップ・シーモア・ホフマンの目的も分からない訳で、お話の内容としては結局何が何だか分からないままに終劇を迎えてしまう。

しかし、「すごく重要なものをすごく悪い人が悪い目的に使おうとしていて、それをトム・クルーズが阻止する話」というアウトラインだけを観客を把握させて、冒険活劇の極めて映画的に純粋なファクターのみを抽出する、という方法論にこの映画は徹頭徹尾こだわっているのであって、その目論見は見事に成功している。

スパイ・アクションの定石をこれだけ詰め込めば、出典が明白なサンプリング・ムービーとなり、それは結果としてパロディーとなる。J.J.エイブラムスは確信犯だ。

これだけのビッグ・バジェット・ムービーなのにもかかわらず、どこかB級的テイストな感じがするのは、オリジナリティーはあえて無視し、お約束プロットをふんだんに詰め込んだからである。

その割り切り方は、個人的にはけっこう好きです。

DATA
  • 原題/Mission Impossible : III
  • 製作年/2006年
  • 製作国/アメリカ
  • 上映時間/126分
STAFF
  • 監督/J.J.エイブラムス
  • 製作/ポーラ・ワグナー
  • 製作総指揮/ストラットン・レオポルド
  • 脚本/J.J.エイブラムス、アレックス・カーツマン、ロベルト・オーチー
  • 撮影/ダン・ミンデル
  • 美術/スコット・チャンブリス
  • 音楽/マイケル・ジアッキノ
  • 衣装/コリーン・アトウッド
CAST
  • トム・クルーズ
  • フィリップ・シーモア・ホフマン
  • ヴィング・レイムス
  • マギー・Q
  • ジョナサン・リス=マイヤーズ
  • ミシェル・モナハン
  • ローレンス・フィッシュバーン
  • ケリー・ラッセル
  • ビリー・クラダップ
  • サイモン・ペッグ
  • エディ・マーサン
  • バハー・スーメク
  • グレッグ・グランバーグ
  • トレイシー・ミッデンドーフ

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