ブラッド・ピットとアンジェリーナ・ジョリーが火花を散らす、セックス・アピール合戦映画
夫婦喧嘩という日常的なモチーフを、コメディー映画に仕立て上げてしまった例は過去いくらでもある。
例えばサスペンスの神様アルフレッド・ヒッチコックは、そのフィルモグラフィーのなかで唯一のラブコメ作品『スミス夫妻』(1941年)を撮っているし、ダニー・グローバーはマイケル・ダグラスとキャスリーン・ターナーを主演に迎えて、強烈なブラック・ユーモアを効かせた『ローズ家の戦争』(1989年)なる作品を上梓している。
しかしながら、夫婦喧嘩のスケールを拡大させて、アクション映画に仕上げてしまったという例は聞いたことがない。
「慎ましやかな夫婦生活を営んでいる平凡なセールスマンが、実は凄腕スパイだった」という設定はジェームズ・キャメロンの『トゥルーライズ』(1994年)なれど、『Mr.&Mrs. スミス』(2005年)は「夫婦お互いが凄腕のヒットマンだった」という、途方もない設定のエスピオナージ・アクション。
「素性を知られたら、相手を48時間以内に殺すべし」という組織の命令によって、スケールのデカすぎる夫婦喧嘩が繰り広げられる。
要はコレ、オス最強の“セックス・アピール・スター”ブラッド・ピットと、メス最強の“セックス・アピール・スター”アンジェリーナ・ジョリーが火花を散らす映画。
アダルティーなフェロモン全開で、お互いが相手をノックアウトせんとする。そんなもん絶対決着つかない訳で、最終的には野性的セックスで夫婦の愛を確かめ合い、二人っきりで組織に挑んで行く。
なんでも、奥さん役には最初ニコール・キッドマンがキャスティングされていたらしいが、主演作『ステップフォード・ワイフ』(2004年)の撮影が延びてしまったため、降板になったそうな。
もしそのままニコール・キッドマンが出演していたら、ここまでセックス・アピール合戦みたいなフェロモン映画にはならかなったろう。
非業のラストに向かって急直下する展開は、『明日に向って撃て!』(1969年)みたいな、アメリカン・ニューシネマ的展開。…と思いきや、何故かラストでは、夫婦セラピーを受けているブラピ&アンジーの姿が。小賢しい結末の付け方には、不満ありまくり。
『ボーン・アイデンティティー』(2002年)で、スパイ映画の新たな潮流を打ち立てたダグ・リーマンにしては、凡作の域を出ないと言わざる得ない。
周知の通り、本作での競演がきっかけでめでたくブラピとアンジーは結ばれた訳だが、当時ブラピはジェニファー・アニストンと結婚しており、いわば略奪愛のような形でハリウッド最強のセクシー・カップルが誕生。
長らく事実婚だったが、2014年に正式に結婚。しかしながらその2年後の2016年には離婚を申請することになってしまった。『Mr.&Mrs. スミス』を地でいくような壮絶な夫婦喧嘩があったのかいな。
- 原題/Mr. & Mrs. Smith
- 製作年/2005年
- 製作国/アメリカ
- 上映時間/120分
- 監督/ダグ・リーマン
- 製作総指揮/エリク・フェイグ
- 製作/ルーカス・フォスター、アキバ・ゴールズマン、エリック・マクレオド、アーノン・ミルチャン、パトリック・ワックスバーガー
- 脚本/サイモン・キンバーグ
- 撮影/ボージャン・バゼリ
- 美術/ジェフ・マン
- 音楽/ジョン・パウエル
- 衣装/マイケル・カプラン
- 特撮/ケヴィン・イーラム
- ブラッド・ピット
- アンジェリーナ・ジョリー
- ヴィンス・ヴォーン
- アダム・ブロディ
- ケリー・ワシントン
- キース・デヴィッド
- クリス・ウェイツ
- レイチェル・ハントリーミシェル・モナハン
- ステファニー・マーチ
- ジェニファー・モリソン
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