“地上数千メートルの動く密室”を舞台に繰り広げられる、旅客機アクション
考古学者、刑事、検察官など様々な役柄を演じてきたハリソン・フォードも、ついに大統領にまで上り詰めた。しかもプロのテロリスト軍団を相手に単身戦いを挑むというのだから、間違いなく史上最強のアメリカン・プレジデントである。
たとえ大ピンチに陥っても大丈夫。なぜならお付きの部下達が体を張ってハリソン大統領の命を守るからだ(間違いなくそのために3~4人は犠牲になって死んでいる)。『エアフォース・ワン』(1997年)は、“人間の命は等価ではない”という現実をまざまざと見せつけてくれる。
たった6人のロシア人テロリストに大統領専用機(エアフォース・ワン)が占拠される、という展開は国防的にいかがなものかと思うが、“地上数千メートルの動く密室”である旅客機をアクションの舞台にする、という発想自体は面白い。
外部からの協力を得て敵を追いつめていくプロットからして、構造は完全に『ダイ・ハード』(1988年)。通信手段の確保、仲間の救出、武器の奪取など鉄板の要素を詰め込んで、物語はダイナミックに進行していく。
「赤子の手をひねるかのように、シークレットサービスを一掃してみせたテロリストが、還暦近い大統領に殴り倒される」という荒唐無稽さには頭を抱えてしまうが、ハリソン・フォードにはハリウッド・スターらしからぬ“等身大感”がある。
冷酷なロシア人テロリストのリーダーを演じるゲーリー・オールドマンをはじめ、ホワイトハウスから大統領をバックアップする副大統領役のグレン・クロース、従順な少佐役のウィリアム・H・メイシーといった当代一流の俳優陣が集結したことによって、重心の低い骨太な作品に仕上がってしまうのだから、映画ってフシギなもんである。
おまけに監督が、『U・ボート』(1981年)や『アウトブレイク』(1995年)といった、硬派なパニック・アクションを自家薬籠中のものとしたウォルフガング・ペーターゼンであるからして、語り口もオーソドックスながら流石の安定感。
色んな意味で、ハリウッドの底力を感じる映画であります。
- 原題/Air Force One
- 製作年/1997年
- 製作国/アメリカ
- 上映時間/125分
- 監督/ウォルフガング・ペーターゼン
- 製作/ゲイル・カッツ、アーミァン・バーンスタイン、ジョン・シェスタック、ウォルフガング・ペーターゼン
- 脚本/アンドリュー・ダブル・マーロー
- 撮影/ミハエル・バルハウス
- 音楽/ジェリー・ゴールドスミス
- 編集/リチャード・フランシス・ブルース
- 美術/ウィリアム・サンデル
- ハリソン・フォード
- ゲーリー・オールドマン
- グレン・クロース
- ウェンディ・クルーソン
- ウィリアム・H・メイシー
- ポール・ギルフォイル
- ディーン・ストックウェル
- ザンダー・バークレー
- ビル・スミトロビッチ
- イリア・バスキン
- ユルゲン・プロホノフ
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