ジョー・ライトが光の表現にこだわった、ジェーン・オースティン原作の古典劇
キーラ・ナイトレイって、コスプレ映画ばっかり出演しているような記憶があるんだが、どうしてだろうねえ。
『パイレーツ・オブ・カリビアン』シリーズでは17世紀のカリビアンルックに身を包んでいるし、『キング・アーサー』(2004年)では中世騎士伝説の姫君を演じてたりするんだが、この娘ってわりと現代的な顔つきなので、あまりコスチューム・プレイには似つかわしくないような気がする。微妙にしゃくれてるし。
『プライドと偏見』(2005年)は、サマセット・モームが世界十大小説の一つに挙げた、ジェーン・オースティンの有名長編小説を映画化した作品。
キーラ嬢は、ここでもクラシカルな色使いのロングドレスに身を包み、ブリディッシュなお嬢様ぶりを発揮。18世紀イギリスにおける下級地主層、いわゆる“ジェントリ”の五人姉妹の次女エリザベスを溌剌と演じるものの、時折見せる笑顔が燃える闘魂に見えて仕方がない。
まあお話もですね、キーラ嬢が超金持ちの資産家ダーシー(マシュー・マクファディン)に見初められて、鼻持ちならない奴だと最初は忌み嫌っていたものの、最後の最後で彼女の“プライドと偏見”が彼への気持ちを曇らせていたことに気づき、めでたく結ばれるというような他愛もない話なんだが、これが意外にも予想を裏切る完成度。いやはや、実に良く出来た映画です。
本作が劇場用作品初監督となるジョー・ライトは、とにかく右に左にカメラを動かしまくって、華麗で流麗な18世紀イギリスの風俗を軽やかに描き出している。流れるようなカメラ移動は、まるで社交ダンスのごとし。
実際舞踏会でのダンスシーンも多い映画だけに、違和感なく映像が接続しているのも心憎い計算。時折挿入されるワンカットの長廻しも、映画的に効いている。
何よりも感嘆したのは、屋内での光の落とし方。全体的にカラーの彩度が高い映画なれど、暖かみのある光を巧みに配置して、映像に独特の柔らかさを付与している。
この映画では、意識的に日の入りと日の出のショットを狙っているが、おそらく光の表現にこだわったゆえだろう。まあ、逆光ぎみのシルエットでダーシーと抱擁する最後のカットは、映像ナルシストのマイケル・ベイみたいな演出で、あまり生理的に受け付けられなかったけど。
とりあえず僕は五人姉妹だったら、地味だけど長女ジェーンを演じたロザムンド・パイクがいいです。ナニ?すでに監督のジョー・ライトと婚約しているって?でも結婚式をドタキャンしたって?いやーマジすか。現実は映画のように甘く結ばれないものですなあ。
- 原題/Pride & Prejudice
- 製作年/2005年
- 製作国/イギリス
- 上映時間/127分
- 監督/ジョー・ライト
- 製作/ティム・ビーヴァン、エリック・フェルナー、ポール・ウェブスター
- 製作総指揮/ライザ・チェイシン、デブラ・ヘイワード
- 脚本/デボラ・モガー
- 撮影/ロマン・オーシン
- プロダクションデザイン/サラ・グリーンウッド
- 衣装/ジャクリーン・デュラン
- 編集/ポール・トシル
- 音楽/ダリオ・マリアネッリ
- 視覚効果/ダブル・ネガティブ
- キーラ・ナイトレイ
- マシュー・マクファディン
- ドナルド・サザーランド
- ブレンダ・ブレッシン
- ジュディ・デンチ
- ロザムンド・パイク
- ルパート・フレンド
- サイモン・ウッズ
- トム・ホランダー
- クローディ・ブレイクリー
- ジェナ・マローン
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