新左翼運動と倒幕運動をオーバーラップさせた、“ゴールデン街映画”
『竜馬暗殺』(1974年)に関する1ダース
【其の一】:『竜馬暗殺』(1974年)は、京都・近江屋新助宅母屋の二階にて、坂本竜馬が暗殺されるまでの最期の3日間を描いた作品…ナリ。
【其の二】:『竜馬暗殺』は、黒木和雄が新宿ゴールデン街で飲み歩いた仲間と製作したことから、別名「ゴールデン街映画」とも呼ばれている…ナリ。
【其の三】:『竜馬暗殺』が製作されたのは、1974年。浅間山荘事件が起きたのが1972年だから、まだ新左翼運動の余韻覚めやらぬ時代でもあった。革命幻想を抱きながら、内部のヘゲモニー争いが内ゲバに発展して弱体化してしまった新左翼と、倒幕によって新しい時代を築かんとする夢を共有しつつも、味方であるはずの薩長や幼なじみの土佐藩士・中岡慎太郎からも命を狙われる坂本龍馬との同時代性をオーバーラップさせて、鮮烈に描き出している…ナリ。
【其の四】:田村正毅による、荒々しい粒子のモノクロ・スタンダード映像がドキュメンタルな迫力を生み出し、ある種のディスカッション・ドラマである本作において、リアリティーの確保に繋がっている…ナリ。
【其の五】:ラヴェルとストラヴィンスキーに影響を受けたという松村禎三による音楽は、哀愁溢れるギターの旋律でありながら、どこかエロティックな匂いを感じさせる…ナリ。
【其の六】:ATGで予算は800万円。超低予算のため、撮影はほとんど世田谷の醤油工場跡で撮られた…ナリ。
【其の七】:妖艶な魅力をふりまく幡役の中川梨絵は、実は別の女優病気で降板したため、急遽代役として呼ばれた。撮影中、食事担当だった中川梨絵は皆にいつもカレーライスをふるまっていた…ラシイ。
【其の八】:原田芳雄と松田優作の初共演作…デアル。
【其の九】:黒木和雄は「演技指導は一切しない」が信条の監督だった。必然的に演技の責任はすべて役者にゆだねられる。本作における即興性の高い奔放な演技は、かくして生まれた…ノデアル。
【其の十】:「ええじゃないか」は、顔におしろいを塗りたくって参加するものである、ということを僕はこの作品で知った…ノデアリマス。
【其の十一】:坂本竜馬を演じた原田芳雄は、撮影当時33歳。竜馬の享年と同じ年齢…ナリ。
【其の十二】:黒木和雄はその後も『祭りの準備』(1975年)、『TOMORROW 明日』(1988年)などの傑作を撮り続け、2006年4月12日に脳梗塞のため死去した。享年75。…R.I.P.
- 製作年/1974年
- 製作国/日本
- 上映時間/118分
- 監督/黒木和雄
- 製作/黒田征太郎、富田幹雄、葛井欣士郎、宮川孝至
- 脚本/清水邦夫、田辺泰志
- 企画/黒田征太郎、富田幹雄、葛井欣士郎
- 撮影/田村正毅
- 音楽/松村禎三
- 美術/山下宏
- 編集/浅井弘
- 録音/加藤一郎
- 原田芳雄
- 石橋蓮司
- 中川梨絵
- 松田優作
- 桃井かおり
- 粟津號
- 野呂圭介
- 田村亮
- 山谷初男
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